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Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー【1】

西村博之とジム・ワトキンスの2ちゃんねる骨肉の争い/上

清義明 ルポライター

アンチヒーロー「ひろゆき」の誕生

 ネットにアクセスして情報を得ている人で、2ちゃんねるを知らない人は少ないだろう。その2ちゃんねるは、後述するように現在では、経営をめぐる西村氏とジム氏の内紛により分裂し、現在は2ちゃんねるは『5ちゃんねる』と名前を変えている。

 1999年に中央大学文学部の学生だった西村氏によってあるWEB掲示板が開設された。「あめぞう掲示板」というアンダーグラウンドな人気掲示板のコンセプトとプログラムをそのまま流用してできたのが2ちゃんねるである。

 2ちゃんねるが人気サイトとなったのは、シンプルなテキストだけの掲示板とスレッドフロー型という書き込み表示の仕方もあったが、なによりも完全匿名のアングラサイトであることを売りにしてきたことだった。

 完全匿名ゆえに身元も何もなく気軽に書き込める。権威や肩書も関係なく、そこに書き込まれる情報のみが尊ばれる。どんな人間でも匿名であるがゆえに、ある種の平等感、疑似デモクラシーな雰囲気もそこにはあった。貴重な情報や議論も中にはあった。一方で匿名ゆえに暴言も許されるし、実社会では決して許されることがないような本音も書き込める。これを識者はコミュニケーションやメディアの在り方として画期的なものとして持ち上げた。もちろんそこには副作用もある。それは激しすぎた。

 匿名掲示板には、いわば主語がない。誰だかわからない主体が跋扈し、暗闇のなかで自分や相手の正体を隠したままコミュニケーションが行われる。その目隠しされた状態のままユーザーは抑圧されていた無意識を解放するかのように、このネットメディアを楽しんだ。同時に、そこは足のつかない情報発信コミュニティともなった。犯罪や差別、誹謗中傷や嫌がらせ、個人情報の暴露から営業妨害、自殺予告、薬物の販売、まで、ありとあらゆるダークサイドの情報が掲示板には書き連ねられた。90年代からサブカルチャーの世界から浸食してきた差別や歴史修正主義もこの暗闇のなかで合流した。「ネット右翼」という存在は、2ちゃんねるの存在抜きでは語ることはできないはずだ。

 そんなアンダーグラウンドな掲示板を、新しいネットのありかたとして広めた、2ちゃんねる管理人の西村氏がいわば「アンチヒーロー」として新しいサブカルチャーの旗手のように評価され

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筆者

清義明

清義明(せい・よしあき) ルポライター

1967年生まれ。株式会社オン・ザ・コーナー代表取締役CEO。著書『サッカーと愛国』(イースト・プレス)でミズノスポーツライター賞優秀賞、サッカー本大賞優秀作品受賞。

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