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38歳FW大久保嘉人の活躍が示す可能性

コロナ禍と闘う2年目のJリーグ開幕

増島みどり スポーツライター

 緊急事態宣言下での観客上限5000(4768人)を迎えたFC東京は3月6日、味の素スタジアムでセレッソ大阪相手に、ホーム初勝利に挑んだ。しかし観戦者が少ないからではなく、「あるストライカー」の一撃でホームは一瞬静まり返った。

拡大セレッソ大阪に入団、新体制発表の会見で意気込みを語った大久保=2021年1月22日(セレッソ大阪提供)

静まり返るスタジアムで、実は数々の記録が・・・

 C大阪のFW大久保嘉人は2017年、FC東京でプレー。在籍1年で28試合に出場し8点をあげたにもかかわらず、翌年、前所属の川崎フロンターレに再び戻ってしまった。今季開幕から2試合で3点と絶好調の38歳の勢いは、6日、古巣を相手にしても止まらず、14分、3試合連続となる今季4点目となるゴールで先制した。

 サッカーでは移籍した選手には手厳しく、それは同時に、クラブを離れた選手への愛情や敬意を表す場合もある。もしコロナ禍での観戦ルールがなければきっと、激しいブーイングも起きたのかもしれない。鋭い動き出しで一瞬にして仕留めたゴールへの静寂は、「よしとぉ! ここで入れるかぁ?」「38歳がそんな鋭い切れ味?・・・」と、サッカーに目の肥えたFC東京ファンの様々な思いが込められたようなシーンだった。

 声援も拍手もアナウンスもなかったが、実際には、いくつもの記録が誕生した瞬間でもあった。38歳8カ月25日のFWが、3戦連続でゴールしたのは、04年のカズ=三浦知良(37歳8カ月28日)を超える17年ぶりのJ1史上日本人最年長記録。開幕からの3戦連続得点でも、06年の広島・ウェズレイの33歳を15年ぶりに更新。J1通算189ゴールとし、前人未到の大台、同200ゴールに前進するともに、「狙える力は十分にある」と、C大阪クルピ監督も期待を寄せるJリーグ最年長得点王(93年横浜マリノスのラモン・ディアス34歳)への挑戦権をも手にした。

 新型コロナウイルスの感染予防と並走するリーグ戦は2シーズン目となってしまった。そんななか、15年ぶりに、プロキャリアをスタートさせたC大阪に復帰した大ベテランのゴールが、応援するクラブを超え、Jリーグ全体を活気づけている。

 FC東京には逆転負けを喫したが試合後、「ゴール前で落ち着けている。シュートを打ったら入りそうな気がする、そんな状態」と、メンタルの充実ぶりを表していた。

大久保が示す可能性とは

 大久保は13年から15年に川崎で史上初の3年連続得点王を獲得。その後、FC東京に移籍し再び川崎に戻ったが結果は出なかった。18年は出場機会がなく、「引退を考え始めた」と、後に振り返っている。

拡大ザンビア代表戦で、後半ロスタイムに決勝ゴールを決めた大久保=2014年6月6日、米フロリダ州

 W杯ロシア大会が行われたこの年、ジュビロ磐田に移籍を決断し、出場7試合目でJ通算200ゴールを達成。しかしあくまで「J1での200ゴールにこだわりたい」と、その時182点だった記録更新への強い思いを口にしていた。その後、磐田でも出場機会を失い、19年にはプロワーストのシーズン1得点で退団した。昨年はJ2の東京ヴェルディに在籍するも、シーズン無得点に終わる。苦難の時期を経て、C大阪に06年以来(一度復帰)15年ぶりに復帰すると、2シーズンでわずか1点、しかもJ2で無得点の38歳ストライカーに対し、また、戦力としてより古巣の情実で獲得したかのようなクラブに対し、厳しい批判が止まなかった。

 大久保が提示する可能性の一つ目は、

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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