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アジア系が狙われる米国のヘイトクライムが急増――自分でできる対策は?

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 「最近アメリカで、アジア人に対するヘイトクライムが勃発していますが、田村さんは大丈夫ですか?」と、日本の知人たちからよく連絡をいただく。

 もう渡米して40年以上になるが、正直に言うとアメリカでアジア人だという理由で明らかな差別を受けた経験は、ほとんどない。筆者は80年代の貿易摩擦によるジャパンバッシングが横行した時代も経験しているが、一生懸命記憶を掘り起こしてみても、差別を受けた記憶は40年でせいぜい3回ほどである。

 米国では19世紀末からアジア人の移民に対する黄渦論が沸き起こり、日系移民に対してもあからさまな人種差別が横行した。また周知のように第二次世界大戦勃発後、ドイツ系、イタリア系ではなく日系人のみが財産を没収され、強制収容所に入れられるという忌まわしい歴史がある。アジア人に対する偏見というのは、確かに存在するだろう。

 でも少なくても筆者が渡米してからのアメリカ、特にニューヨークは、アジア人にとって肩身の狭い思いをしながら暮らさなくてはならない場所では、決してなかった。

 もちろん筆者自身が体験していないからといって、ヘイトクライムが存在していないわけではない。2020年2月のコロナ・パンデミック発生後、全米でアジア人が被害にあった犯罪は150%増加していると報告されている。

米ジョージア州で起きた銃撃事件の犠牲者を悼むニューヨークの集会で2021年3月19日、「私たちも米国だ」と書かれたボードを掲げるアジア系市民20210320米ジョージア州で起きた銃撃事件の犠牲者を悼んでニューヨークで開かれた集会。アジア系市民が「私たちも米国だ」と書かれたボードを掲げた=2021年3月19日

多発するアジア系を狙った犯罪

 3月16日には、アトランタ近郊でアジア系マッサージ・スパサロンが3軒襲われ、合計8人が射殺されるという事件が起きた。被害者のうち6人が、アジア系の女性だった。

 ニューヨーク市内でも、このところアジア人に対する犯罪は数えきれないほど起きている。3月2日にはチャイナタウンで50代のマレーシア系の男性が、いきなり通りがかりの男に殴り掛かられて意識を失った。

 2月にはやはりチャイナタウンで、36歳のアジア系男性が、後ろからナイフで刺されて病院に運ばれた。重体だという。後に23歳の男が出頭し、逮捕されている。

 中でも2020年9月に起きた事件は、日本人コミュニティを震撼させた。

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