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サイバースペースにおける「言論の自由」の社会実験の失敗/上

Qアノンと日本発の匿名掲示板カルチャー【5】

清義明 ルポライター

「オルタナ右翼」のプラットフォームとなった4chan

 4chanの日本発の匿名掲示板のカウンターカルチャーが、アメリカにおいて巨大な存在になっていったことは、前述した。そして、自分達の聖域を守ろうとして、4chanのオタクたちがゲーマーゲート事件を起こした経緯も書いたとおりだ。

 ゲーマーゲート事件(第4回参照)で爆発的にアクセスが増え、それが社会問題となった4chanから、創設者のハンドルネーム「ムート」ことクリストファー・プール氏は逃げ出したと言っていい。

 プール氏は巻き起こる社会的な非難をうけて、ゲーマーゲート事件の書き込みなどを禁止する方針を打ち出していた。そうすると、今度は4chanのユーザーから批判が巻き起こる。にっちもさっちも行かなくなった末、プール氏がそのサイトを売却した先が、日本で2ちゃんねるを失っていた西村博之だ。プール氏は見切りをつけた4chanを手放したのち、Googleに転職した。

 これが4chanの転機となる。単にオーナーが変わったというだけではない。管理方針が変わったのだ。西村氏は、これまでの4chanにさらに2ちゃんねるの自由放任主義の哲学を再度持ち込み、その結果ヘイトスピーチが4chanで激増したのだ。

 「彼が経営するようになってから規制がかなりルーズになりました。前のオーナーであるクリストファー・プールは酷いコンテンツに対してはある程度注意を向けていました。あまりに害をなすものは削除されてましたし。しかし西村は利益重視でユーザーを喜ばせることだけを考えて、彼らの好きなようにさせました。そのためにヘイトスピーチが爆発的に増えたのです」と自らも4chanのユーザーだった、フレドリック・ブレンナン氏は語る。

 4chanは、2ちゃんねると同じくボランティアの運営によって支えられている。そのボランティアの管理者たちによって、あからさまな差別思想や暴力的なものでとりわけ酷いものは自主的に削除していたのだ。また、ゲーマーゲート事件のような炎上事件になるとプール氏が規制に乗り出すようなこともあった。だが西村氏がオーナーになってからはそれがなくなった。

 ちょうど西村氏が4chanを買収したのはゲーマーゲート事件で反フェミニズムの風潮が、同じ反社会的正義が旗印のネットの差別主義や排外主義と結びついて煮えたぎっている真っ最中のことである。これでさらにヘイトスピーチと極右思想の工場がフル稼働

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筆者

清義明

清義明(せい・よしあき) ルポライター

1967年生まれ。株式会社オン・ザ・コーナー代表取締役CEO。著書『サッカーと愛国』(イースト・プレス)でミズノスポーツライター賞優秀賞、サッカー本大賞優秀作品受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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