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 1901(明治34)年1月2日と3日に、報知新聞が「二十世紀の豫言」と題した記事を特集した。20世紀の100年間に実現させたいことを予言する試みである。これを読むと、当時の人たちの予測力に驚く。

 当時の日本は、西洋文明をいち早く取り入れて近代化に成功し、1889年に大日本帝国憲法を制定し、東海道線も新橋神戸間で開通していた。1891年濃尾地震や1896年明治三陸地震での甚大な被害はあったものの、日清戦争にも勝利して、列強の一角に加わり始めていた。前年の1900年には義和団事件が起きて、列強による中国分割が始まり、フランスではパリ万博やパリ五輪が開催され、エッフェル塔やパリの地下鉄が建設された。蒸気機関に加え、電気や電話が使われ始め、大規模な鉄骨構造物も登場し、まさに新しい時代が始まろうとしていたときに100年後の世界を予測した。

予言された23項目

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 序文では、19世紀の技術進歩や、蒸気や電気の時代への移り変わり、人道主義や婦人の地位向上のことに触れた上で、20世紀の科学的な進歩について23項目を挙げ、20世紀は奇異の時代になるだろうと予測している。

 23項目は、「1 無線電信及電話」、「2 遠距離の写真」、「3 野獸の滅亡、「4 サハラ砂漠、「5 七日間世界一周」、「6 空中軍艦空中砲台」、「7 蚊及蚤の滅亡」、「8 暑寒知らず」、「9 植物と電気」、「10 人声十里に達す」、「11 写真電話」、「12 買物便法」、「13 電気の世界」、「14 鉄道速力」、「15 市街鉄道」、「16 鉄道の連絡」、「17 暴風を防ぐ」、「18 人の身幹」、「19 医術の進歩」、「20 自動車の世」、「21 人と獣との会話自在」、「22 幼稚園の廃止」、「23 電気の輸送」である(一部、現在の漢字に変更)。多くの予測は実現されおり、未来技術の予測力に驚く。

放送通信とインターネットで実現された世界

 23項目のうち、多くが放送・通信やインターネットによって実現された。「1 無線電信及電話」は東京にいる人がロンドンやニューヨークの友人と自由に対話できる世界、「2 遠距離の写真」はヨーロッパでの戦争の状況を東京の記者が居ながらにカラーで見られる世界、「10 人声十里に達す」は伝声器が改良され40キロ離れた男女がラブコールできる世界、「11 写真電話」はテレビ電話の世界、「12 買物便法」はテレビ電話で遠隔地の品物を確認して売買し品物を地中輸送管で配達する世界、を予測している。テレビもコンピュータも無かった時代にこのような予測をしたことは凄いと感じる。

 現在は、Wifiが整備され、皆がスマホを持ち歩き、インターネット会議やネットショップを利用できるようになり、予測以上の世界が実現されている。地中輸送管はないものの、宅配便で目的は達せられており、ドローン宅配も現実味を帯びている。

電気と電化製品の普及で実現された世界

 発電所や送配電網の整備、電化製品の普及により、多くの事柄が実現された。「8 暑寒知らず」は寒暑を調節する空気送風を実現しアフリカが進歩する世界、「9 植物と電気」は電気の力で野菜を成長させグリーンランドでも熱帯植物が生育する世界、「13 電気の世界」は石炭が尽きて電気が燃料になる世界、「23 電気の輸送」は水力発電を送電する世界、を予測している。

 現在は、石炭資源は尽きてはおらず、石油やLNG、原子力も利用されるようになったが、大規模な発電所と、太陽電池などの再生可能エネルギー、燃料電池が実現し、送配電網も整備され、電気エネルギーの利活用が進んだ。また、エアコンや温室も実現され、100年前の予想以上の世界になっている。

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筆者

福和伸夫

福和伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大学減災連携研究センター長・教授

1957年に名古屋に生まれ、81年に名古屋大学大学院を修了した後、10年間、民間建設会社にて耐震研究に従事、その後、名古屋大学に異動し、工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授を経て、2012年より現職。建築耐震工学や地震工学に関する教育・研究の傍ら、減災活動を実践している。とくに、南海トラフ地震などの巨大災害の軽減のため、地域の産・官・学・民がホンキになり、その総力を結集することで災害を克服するよう、減災連携研究センターの設立、減災館の建設、あいち・なごや強靭化共創センターの創設などに力を注いでいる。

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