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【46】120年前の未来を予測する力

福和伸夫 名古屋大学減災連携研究センター教授

 1901(明治34)年1月2日と3日に、報知新聞が「二十世紀の豫言」と題した記事を特集した。20世紀の100年間に実現させたいことを予言する試みである。これを読むと、当時の人たちの予測力に驚く。

 当時の日本は、西洋文明をいち早く取り入れて近代化に成功し、1889年に大日本帝国憲法を制定し、東海道線も新橋神戸間で開通していた。1891年濃尾地震や1896年明治三陸地震での甚大な被害はあったものの、日清戦争にも勝利して、列強の一角に加わり始めていた。前年の1900年には義和団事件が起きて、列強による中国分割が始まり、フランスではパリ万博やパリ五輪が開催され、エッフェル塔やパリの地下鉄が建設された。蒸気機関に加え、電気や電話が使われ始め、大規模な鉄骨構造物も登場し、まさに新しい時代が始まろうとしていたときに100年後の世界を予測した。

予言された23項目

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 序文では、19世紀の技術進歩や、蒸気や電気の時代への移り変わり、人道主義や婦人の地位向上のことに触れた上で、20世紀の科学的な進歩について23項目を挙げ、20世紀は奇異の時代になるだろうと予測している。

 23項目は、「1 無線電信及電話」、「2 遠距離の写真」、「3 野獸の滅亡、「4 サハラ砂漠、「5 七日間世界一周」、「6 空中軍艦空中砲台」、「7 蚊及蚤の滅亡」、「8 暑寒知らず」、「9 植物と電気」、「10 人声十里に達す」、「11 写真電話」、「12 買物便法」、「13 電気の世界」、「14 鉄道速力」、「15 市街鉄道」、「16 鉄道の連絡」、「17 暴風を防ぐ」、「18 人の身幹」、「19 医術の進歩」、「20 自動車の世」、「21 人と獣との会話自在」、「22 幼稚園の廃止」、「23 電気の輸送」である(一部、現在の漢字に変更)。多くの予測は実現されおり、未来技術の予測力に驚く。

放送通信とインターネットで実現された世界

 23項目のうち、多くが放送・通信やインターネットによって実現された。「1 無線電信及電話」は東京にいる人がロンドンやニューヨークの友人と自由に対話できる世界、「2 遠距離の写真」はヨーロッパでの戦争の状況を東京の記者が居ながらにカラーで見られる世界、「10 人声十里に達す」は伝声器が改良され40キロ離れた男女がラブコールできる世界、「11 写真電話」はテレビ電話の世界、「12 買物便法」はテレビ電話で遠隔地の品物を確認して売買し品物を地中輸送管で配達する世界、を予測している。テレビもコンピュータも無かった時代にこのような予測をしたことは凄いと感じる。

 現在は、Wifiが整備され、皆がスマホを持ち歩き、インターネット会議やネットショップを利用できるようになり、予測以上の世界が実現されている。地中輸送管はないものの、宅配便で目的は達せられており、ドローン宅配も現実味を帯びている。

電気と電化製品の普及で実現された世界

 発電所や送配電網の整備、電化製品の普及により、多くの事柄が実現された。「8 暑寒知らず」は寒暑を調節する空気送風を実現しアフリカが進歩する世界、「9 植物と電気」は電気の力で野菜を成長させグリーンランドでも熱帯植物が生育する世界、「13 電気の世界」は石炭が尽きて電気が燃料になる世界、「23 電気の輸送」は水力発電を送電する世界、を予測している。

 現在は、石炭資源は尽きてはおらず、石油やLNG、原子力も利用されるようになったが、大規模な発電所と、太陽電池などの再生可能エネルギー、燃料電池が実現し、送配電網も整備され、電気エネルギーの利活用が進んだ。また、エアコンや温室も実現され、100年前の予想以上の世界になっている。

高速で多様な輸送手段による交流が実現した世界

 高速鉄道、自動車、飛行機などの多様かつ高速な輸送手段により、移動に関わる予測はおおむね達成された。「5 七日間世界一周」は19世紀末に80日かかった世界一周を7日間で実現し世界中の人が海外旅行できる世界、「6 空中軍艦空中砲台」は飛行船による軍艦が砲台を持って戦争する世界、「14 鉄道速力」は冷暖房付きの大型機関車が東京・神戸間を2時間半で、ニューヨーク・サンフランシスコ間を一昼夜で移動できる世界、「15 市街鉄道」は都会から馬車や路面電車が無くなり地下鉄やモノレールが走る世界、「16 鉄道の連絡」は鉄道が5大陸を結ぶ世界、「20 自動車の世」は馬車に代わって廉価な自動車が使われる世界、を予測した。

 現代は、飛行船に代わって爆撃機やミサイルが、鉄道に代わって飛行機が大陸間輸送に使われているが、飛行機や電化された高速鉄道により予測のほとんどが実現されつつある。120年前に、世界中の人が海外旅行すると予測している先見性には驚く。

人間の体躯と医療・教育の進歩した世界

 人間の体や医療、教育の事柄についても、おおむね実現しつつある。「18 人の身幹」は身長が180センチ以上に大型化すること、「19 医術の進歩」は電気針・X線・外科術などの様々な発達した医療、「22 幼稚園の廃止」は家庭教育の充実と大学全入の世界を予測している。

 残念ながら、現状、⽇本⼈の⾝⻑は伸びたが平均180センチまでは届いていない。医学の進展は方向性はやや異なっているが、ガンも含め多くの病気が克服されつつある。また、幼稚園や保育園は残っているものの様々な教育の場が作られ、大学進学率も50%を超える学歴社会になっている。人に関わる進歩は120年前の予測ほどではないが、方向性は間違っていない。

自然や動植物との関わりは予測かなわず

 一方、自然災害や生物に関わることは、予測通りにはなって

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