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ふたり親世帯に初めてさした政治の光~歴史的な貧困対策成立。早急に給付を

困窮する子育て世帯を励まし、尊厳を回復する力を持つ

小河光治 公益財団法人「あすのば」代表理事

積年の課題が超党派協調で実現。首相自ら方針発表

 日本の子どもの貧困対策において、歴史的な施策が実現する。

 困窮する子育て世帯への新たな特別給付金が、ひとり親世帯だけでなく、初めて、ふたり親世帯をも対象とすることが決まったのだ。多くの家庭が望み続け、長年、私たち支援団体や研究者が協力して要望してきた課題であった(論座2月2日付の拙稿「子どもの貧困、コロナで異次元の危機に~給付金が急務 両親いる世帯にも」ご参照)。

 危機的状況への訴えを受けて、与野党が党派を超えて協調し、コロナ禍が長期化する中での生活支援の特別給付金として制度をまとめ、3月16日に菅義偉首相が自ら方針を発表した。

拡大新型コロナウイルスの感染拡大に影響を受けた非正規労働者らへの支援を話し合う関係閣僚会議で、所得が低い子育て世帯への給付金の支給を表明した菅義偉首相。与野党問わぬ要求の声を受けて、官邸内の慎重姿勢を一転させ、ふたり親世帯も対象とする施策に拡充した=2021年3月16日、首相官邸
 政治が、あるべき姿を示してくれたと感銘を受けた。決定の遅れや制度面などでいくつか課題があるものの、支給額が私たちの要望より多額(子ども1人あたり5万円)になるなど、高く評価できる内容になっている。行政府は、成立したこの施策の運用への設計を急いでいただきたい。

 年度替わりは通常より多くのお金が必要であり、新型コロナウイルスの感染がまたも拡大傾向を見せている今、くらしはますます厳しくなるだろう。一刻も早く給付金を届ける必要がある。

ふたり親世帯には「7月以降」、見通しも不明

 こう期待していた矢先、ショッキングな事態が判明した。「ふたり親世帯への支給が大きく遅れ、7月以降にずれ込む見通し」と報じられたのだ(朝日新聞4月11日付)。厚生労働省への取材による記事だ。

 ひとり親世帯には昨年、児童扶養手当の受給世帯を対象に2回の支給実績があるので実務は比較的容易で、4~5月の支給が可能なようだが、ふたり親世帯は対象の確定と支給手順の検討に時間がかかるのだという。

 厚労省のホームページ(HP)を見ると、今回の特別給付金の説明資料では、ひとり親世帯分だけが完成した形で示されている。しかも、時期が具体的なのは、児童扶養手当受給者についてだけだ(「可能な限り5月末までに支給」とある)。児童扶養手当を受けていなくても、コロナ禍で収入が急減した世帯は給付金の緊急性が高いはずだが、HPでは「可能な限り速やかに」と、あいまいな状態だ。

 さらに問題なのは、HPに説明のある「その他低所得の子育て世帯」に「ふたり親世帯」が含まれるはずだが、「実務について自治体と調整を行い、」などとだけ記され、見通しは全くわからないことだ。

拡大第1次集約分として3月2日に首相あてに提出された50135筆のオンライン署名。その後も署名は続いている

人間の「尊厳」を取り戻す歴史的な施策

 私は本稿で、今回の給付金の意義と背景をお伝えするとともに、国と自治体には、困窮する家庭へ、速やかに、よりよい形で届けるよう強く求めたい。その手法についても提言したい。

 冒頭で、「歴史的な施策」と表現した。大仰に思われたかもしれない。しかし、ふたり親世帯が今回の特別給付金の対象に含められたことは、経済的な意味にとどまらない力を持つ。これまで、差別的な立場で社会から見捨てられてきた人々が、人間としての「尊厳」を取り戻すことにもつながる施策なのだと、是非わかっていただきたい。

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筆者

小河光治

小河光治(おがわ・こうじ) 公益財団法人「あすのば」代表理事

1965年愛知県小牧市生まれ。明治大学卒業後、あしなが育英会に26年間勤務し、阪神・淡路大震災遺児の心のケアのための神戸レインボーハウス館長、子どもの貧困担当などを務めた。2015年3月、福島大学大学院地域政策科学研究科修了。同年6月、子どもの貧困対策センター「一般財団法人あすのば」を設立。16年4月、「公益財団法人あすのば」 に移行。内閣府「子どもの貧困対策に関する検討会」構成員(2014年)、内閣府「休眠預金等活用審議会」専門委員主査代理(17年~)、文部科学省「高校生等への修学支援に関する協力者会議」委員(17年~)。滋賀の縁創造実践センター・社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会理事(19年~)。 Facebook:公益財団法人あすのば

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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