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ふたり親世帯に初めてさした政治の光~歴史的な貧困対策成立。早急に給付を

困窮する子育て世帯を励まし、尊厳を回復する力を持つ

小河光治 公益財団法人「あすのば」代表理事

拡大「コロナで困窮する子どもたちを救おう!プロジェクト」のオンライン署名ページ。61000人以上の署名を得て、ふたり親世帯を含む給付金が決定する力となった。4⽉中の⽀給を国に訴えてきたが、ふたり親世帯へは支給の目処もたっていない

ふたり親世帯の苦難。自己責任にあらず社会構造が問題

 ふたり親世帯は、日本の子どもの貧困対策で、コロナ禍以前からずっと、支援の「蚊帳の外」に置かれてきた。いいかえると、「公的支援が何もない」といっていい状態だった。コロナ禍の施策でも、昨年夏と年末、困窮するひとり親世帯には給付金が支給されたものの、ふたり親世帯は見送られた。3度目の給付金で、政治が公平に光を当てたことの意味は極めて大きい。

 そもそも、困窮の苦しさは、ひとり親もふたり親も変わらないはずだ。世間から貧困を「自己責任」と責められもする。そして、ふたり親世帯は、さらに追い込まれる環境にある。「両親がいるのに子育ても十分にできず情けない」と自責の念に苦しむ人たちを、何度も見てきた。心が痛むばかりだ。

 実際は、自己責任などではない。問題は、稼ぎたくても稼げない社会の構造にある。

 非正規の労働者が雇用されている人の4割を占める時代だ。能力も意欲もあるのに、両親ともに低賃金でダブルワーク、トリプルワークを強いられ、何とか食いつないできた。まさに、自助努力だ。それが、コロナ禍で生き延びる手段を奪われ、もはや、頑張れるものが無い状態に陥っている。

金銭面だけでなく精神的苦痛からの解放に

 こうした世帯にも支援が届くことは、経済的な意味だけではなく、精神的な苦痛からも開放されることへの一歩につながると確信する。そして、「厳しい日々は続くけど、あきらめずに生きていこう」というエンカレッジにもつながるだろう。

 私は幼少期、父を亡くし生活に窮する中で、「後ろ指をさされないように」と母にいわれて育った。貧乏、恵まれない子、男親のいない家庭……。社会からレッテルをはられ、自分たちもそう思わざるを得なくなる。大人なっても、こうしたレッテルに苦しむことも少なくなかった。

 国が制度として平等に認めれば、世の人々のまなざしも変わっていくだろう。胸を張って生きていい、堂々としていい。たとえ窮状はかわらなくても、生きる力になる。

 今、1年半前のことを思い出す。未婚のひとり親世帯への「寡婦控除」適用を国が認めた時、当事者のかたにうかがった言葉だ。「同じ風景を見ているはずなのに、いままでとはまったく違うように感じる」。差別されてきた人たちが、顔をあげてお話になる姿に感動した。

 自殺が増え続けた二十年前に、自死遺児が、実名で社会に自殺対策を訴えたことも強烈な出来事だった。親の自殺をだれにも話せず、苦しみ隠して生きる遺児が大半だった。「親を自殺で亡くしたことは恥ずかしいことじゃない。堂々と生きていいことを同じ境遇の子どもたちにも伝えたい」という姿に胸が震えた。

 いずれも、社会に認められにくかった当事者たちの「尊厳の回復」だったといえるのではないか。今回のふたり親世帯への施策は、日本の貧困対策の歴史で、これらに匹敵するものと私はとらえている。

拡大子どもたちの入学や新生活を応援する「あすのば」の給付金は、学生や若者たちがお金とともに「寄り添う想いも贈りたい」と発案。2015年の真冬に全国各地の街頭で呼びかけた募金から生まれた=東京駅前

給付金の大きな意義。子が育ち、思いやりのリレーが

 入学や進学、新生活を迎えるこの時期に、国から給付金が届けられる意味は大きい。ランドセルや制服などを揃えられることに加え、子どもの門出を祝う温かいエールでもある。さらには、困窮する世帯の子どもたちとって、給付金は一層、大切な意味を持つ。このことを私の経験から紹介したい。

 私が代表を務める子どもの貧困対策センター「公益財団法人あすのば」は、困窮する世帯の子どもを対象とした「入学・新生活応援給付金」という事業を毎春、実施している。きっかけは、全国各地の若者の思いだった。

 「ひとりぼっちじゃないよ。あなたのことを想っている人が『ここにいるよ』」

 2015年の真冬。若者たちは給付金とともにこうした想いも子どもたちに贈りたいと考え、各地で街頭募金を呼びかけた。翌春から給付が実現すると、想像以上のことが起きた。

 給付金を受けた小中学生らは、若者たちとつながり、会のキャンプに参加して寝食をともにする。すると、その子たちが成長して、今度は支える側にまわって、年下の子を妹や弟のように面倒みてくれることが続いた。だれかから教えてもらったわけではないだろうが、温かいおもいやりのリレーが始まっていることを、何よりうれしく感じてきた。

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筆者

小河光治

小河光治(おがわ・こうじ) 公益財団法人「あすのば」代表理事

1965年愛知県小牧市生まれ。明治大学卒業後、あしなが育英会に26年間勤務し、阪神・淡路大震災遺児の心のケアのための神戸レインボーハウス館長、子どもの貧困担当などを務めた。2015年3月、福島大学大学院地域政策科学研究科修了。同年6月、子どもの貧困対策センター「一般財団法人あすのば」を設立。16年4月、「公益財団法人あすのば」 に移行。内閣府「子どもの貧困対策に関する検討会」構成員(2014年)、内閣府「休眠預金等活用審議会」専門委員主査代理(17年~)、文部科学省「高校生等への修学支援に関する協力者会議」委員(17年~)。滋賀の縁創造実践センター・社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会理事(19年~)。 Facebook:公益財団法人あすのば

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