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「うちわ会食」 雑な行政にはNGを

ビッグマウスで適当なことを言っても、現実には何も対応できない知事や首相

赤木智弘 フリーライター

 兵庫県が新型コロナ対策の一環として打ち出していた「うちわ会食」に対し批判が殺到。呼びかけに際し配布予定だった「会食時は扇子・うちわで飛沫防止を!」と書かれた、うちわ32万本の配布の中止を決めた(「うちわの配布、一転中止 兵庫知事「行き過ぎだった」」朝日新聞デジタル2020年4月14日)。

 まず重要なのは、これが新型コロナの流行が報じられ、日本でも対策をどうするかが検討されていたような1年前の話ではなく、今現在、2021年の話であるということだ。世界中で新型コロナが流行し、我々日本人のみならず、世界中の人々が多くのことを学んだ。その中でも最も学ぶことがあったのが、飛沫感染におけるマスクの有効性である。

知識をアップデートしていなかった井戸知事

拡大食事の際、うちわで口元を覆う「うちわ会食」を呼びかける兵庫県の井戸敏三知事=2021年4月9日、神戸市中央区

 2020年の4月頃は、まだマスクの有効性が十分に理解されていなかった。僕自身も当時の医学的な主張を見るに、それほどマスクの着用が重要であるとは考えていなかった。

 しかし、様々な観点からマスクの有効性が見直され、一部の跳ねっ返りを除けば世界中の人々がマスクをするようになった。そのため、これまでほとんどマスクの需要がなかった国でもマスクが必要となり、一時的なマスクの品不足などもあった。

 その一方で、マスクに代わる、息苦しくなく、顔がちゃんと見える飛沫防護策として期待されたフェースシールドは、息苦しさなどがない代わりに開口部分が大きいことから、無いよりはマシだが、決して思ったような飛沫飛散防護の効果を発揮しないことが分かっている。

 マスク会食を打ち出した兵庫県の井戸敏三知事は、マスク会食推進の中、記者とのやりとりで「フェースシールドがOKならば、飛沫感染防止で、うちわやセンスもOKのはず」と答えているが、フェースシールド会食などでOKだと思って良いのは去年までである。

 このやりとりを見れば、井戸知事が新型コロナに関する知識を十分にアップデートできていなかったことが分かってしまうのである。

なぜ、うちわではダメなのかはハッキリしている

 そして何より、うちわはフェースシールドよりもはるかに飛沫飛散防護の効果が期待できないのは、何もスパコンでシミュレーションしなくても、ハッキリと分かる。理由をいくつか述べよう。

 まずは、うちわは裏表がハッキリしないのが問題である。

 マスクであれば、アベノマスクのような布マスクでは裏表は分かりにくいが、普通の不織布マスクであれば、装着するときにノーズワイヤーを曲げるので、形で裏表が分かる。フェースシールドであれば額に当てるスポンジ部分が内側に来るので、裏表は簡単に分かる。

 しかし、うちわは裏表ともに同じ形状で、どちらが裏か表かは使う人次第である。表裏の絵柄が異なるにせよ、わざわざ絵柄で表裏を判別しながらうちわを使っている人を僕は見たこともないし、僕自身も気にしない。

 マスクをしていて食事をするときに、僕は自分の上着のポケットに入れるのだが、テーブルの上に表面を下にしておく人も少なくない。間違っても自分の口がついている裏面を下にしておく人はいないだろうし、ワイヤーの曲がり具合で、どちらが表面かも簡単に分かる。

 ところが、うちわは平面で裏表がないから、どちらを下にしても違和感なく置けてしまう。よほど気を付けてなければ、裏表を間違えることは確実だ。もし、口からの呼気を受けた方を下にしてしまえば、テーブルに飛沫が付いてしまう。そこに誰かが手を突いたり、食器を置いたりすれば、次々と飛沫がうつっていくのである。

 じゃあ、置かずにずっと手で持っていれば良いのか。

 マスクであれば、片方の紐を外して耳に引っかけておくことができる。フェースシールドであれば付けっぱなしで大丈夫だ。しかしうちわをずっと手に持ったままで、食事をするのは不可能だろう。必ずどこかに置くことになる。

 そして何より、日本で暮らす人たちがうちわを持ったら、必ずしてしまうことはなんだろうか。

 そう、うちわを持っていたらどうしたって無意識に扇いでしまうのである。飛沫が付いたうちわを扇いで風を起こす。これでは飛沫を防ぐどころか、飛沫拡散装置である。

 また当然、使い回しの問題もある。

 たまにお店などで夏場にうちわが備え付けられていて、扇ぐことがある。つまりうちわにとって使い回しはさほど珍しいことではない。一方で、マスクやフェースシールドは元々多人数で使い回すものではないことから、使い回しが問題になることはほとんど考えられないのである。

 以上、うちわがフェースシールド以下の代物であることの証明である。

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筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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