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最後のカウントダウン 五輪開幕100日前に突き付けられる厳しい現実

公道での中止に続き、走行も中止に 前提を変える聖火リレーの難しさ

増島みどり スポーツライター

 五輪まで残り50日、または100日といった節目はすでに大会の一部として捉えられるため、7月23日に始まる東京オリンピック(パラリンピックは8月24日から)100日前となった4月14日は、2013年に五輪招致が決まって以来1年8年続けてきた「カウントダウンセレモニー」の、いわば最後ともいえる日だった。

8年間も続いた最後の〝カウントダウン〟は・・・

拡大東京五輪開幕100日前に合わせて除幕された東京五輪・パラリンピックの公式マスコット像と並ぶ(左から)山下泰裕・IOC会長、小池百合子・東京都知事、遠藤利明・東京2020組織委員会副会長、石川良一・東京都議会議長=2021年4月14日午前、東京都新宿区の都庁

 過去の五輪を見ても、100日という特別な節目を主催者側がいかに重要視して来たかが分かる。12年ロンドンでは、100日前に盛大なセレモニーが市内で開催され、セバスチャン・コー組織委員会会長が、王立植物園で2万本の花で造られた五輪マークを前に、大会のスローガン「世代を超えたインスピレーション」(Inspire a generation)をプロモーションビデオと共に発表。当時の懸念はテロで、同会長は「絶対的に安心・安全な五輪を開催する」と自信をのぞかせた。

 16年リオデジャネイロ五輪100日前は、ギリシャでリオに聖火が渡されている。同時に、大会期間中にリオ市内に設置される聖火台がセレモニーで発表され、五輪のシンボルへの関心を一気に高めた。

 1年延期で様々なスケジュールが変更されたなか迎えた東京五輪の100日は、コロナ禍で一変した世界を認識させるかのように静かだった。

 東京都では、小池百合子都知事らによる「ミライトワ」と「ソメイティ」のマスコットが都庁内で、高尾山では五輪マークが設置され、2カ所同時に披露。費用の簡素化、経費削減、何より新型コロナウイルス感染拡大と第四波への恐れからか、機運を盛りあげる状況ではなかった。

 小池都知事は「東京都は重点措置の期間にしっかりとコロナを抑え込んで皆さんと100日後に大会を開催する。国内外のアスリートによるすばらしい大会となることを心から期待している」と、コロナとの闘いを乗り越えて予定通り開催する意欲を改めて表明。IOC(国際オリンピック委員会)は、コーツ・調整委員長が「(東京五輪は)確実に開催される。可能な限り、もっとも安全な大会なる」との声明を発表した。

 「中止はない」と断言するIOC、東京都、組織委員会のスタンスは変わらない。一方で、地方自治体との連携の証ともいえる聖火リレーを継続する困難は増し、五輪のような大規模イベントで必要となる多岐にわたる感染症対策にも答えは出ない。選考会を乗り越え、1年遅れて代表権を獲得したアスリートたち、五輪を迎える人々、医療関係者が抱く不安も募るばかりだ。

 100日を切ってラストスパートにアクセルと踏み込みながら、サイドブレーキは引いたまま。それぞれの思惑が一致せず、方向が分からず走っているかのような様子を象徴する日だった。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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