大矢雅弘(おおや・まさひろ) ライター
朝日新聞社で社会部記者、那覇支局長、編集委員などを経て、論説委員として沖縄問題や水俣病問題、川辺川ダム、原爆などを担当。天草支局長を最後に2020年8月に退職。著書に『地球環境最前線』(共著)、『復帰世20年』(共著、のちに朝日文庫の『沖縄報告』に収録)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
健康診断データを積み重ねた60年の軌跡
久山町の2019年度の特定健診の受診率は63.8%。「ひひひ展」では、福岡県の34.2%、東京都の44.2%、大阪府の30.1%といった数字も示し、久山町民の受診率が群を抜いて高いことを誇らしげに示していた。久山町では毎年の特定健診のほかに、5年に一度、40歳以上の町民全員を対象にした一斉健診もする。一人当たり2時間半ほどかけて人間ドック並みの約20項目を検査する。驚くべきことに健診当日に検査結果が伝えられ、10分~30分間ほどかけて、医師による詳しい診察・結果説明とともに保健師や管理栄養士による健康指導をしている。
さらに、毎週土曜日には、持ち回りで久山町研究室のスタッフが町内5軒の開業医を巡回し、町民がどんな病気で受診しているかを把握する。町外の病院に入院する住民も回る。巡回結果は研究室の日誌に記載され、翌週月曜日のミーティングで共有される。このほか、平日の日中には久山町研究室のスタッフが交代で治療などについての質問や相談にのる。電話による無料の健康相談にも応じており、相談件数は年に300~400件にのぼるという。
5年ごとの一斉健診では、その年までに新たに40歳を迎えた人たちも順次加えられる。その後、健診受診者全員に調査の同意を得て、継続的に追跡調査が始まり、健康状態をチェックされ、病気の発症や死亡者、死亡原因などを調べていく。特筆に値すべきなのは追跡調査の徹底ぶり