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オリンピックとジェンダーレス

東京五輪は多様性をレガシーに変えられるか

増島みどり スポーツライター

組織委員会・橋本聖子会長が、初めて訪れた施設とは

 4月27日、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長が、都内にある性的マイノリティ(LGBTQ)の情報発信拠点「プライドハウス東京レガシー」を訪問した。施設内でIOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長や、東京都の小池百合子都知事の寄せ書きを見つけると、「私も書きたい」と希望し、五輪担当大臣時代から願ってきたという施設の見学に興味深い様子だった。対話の時間には、五輪後もスポーツ団体から理解を広める活動をつなげて欲しいといった意見や、ボランティアへの研修、また、河瀬直美監督が撮影する記録映画に「LGBTQ」を取り上げられないかとの要望も受けていた。

 会長は見学後、「東京五輪を振り返ったときに、多様性と調和を考える転換であったと思われるような活動をしていく。それが責務」と、東京五輪が掲げるビジョン「多様性と調和」の実現に改めて強い意欲を見せた。

 組織委員会の森喜朗・前会長の発言で、社会的な意味合いでの男女差「ジェンダー」の遅れが指摘された。橋本会長はこれを改善するため、「まずは形で見えるように」と、理事会における女性理事の比率を一気に42%にまで引き上げ、ジェンダー平等推進チームを発足させるなど動いてきた。

拡大プライドハウス東京を視察、レインボー柄のマスクを着ける大会組織委員会の橋本聖子会長=2021年4月27日、東京都新宿区

オリンピック、ワールドカップとジェンダーレス

 「プライドハウス」とは、LGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、性を決められないクエスチョニング)など、性的少数者に関する情報発信を行うホスピタリティ施設の設置や、多様性に関する様々なイベントやコンテンツの提供を行うプロジェクトを指す(組織委員会資料より)。

 性的少数者への偏見や差別は、スポーツ界にも根強い。そこで、性別を問わず、選手だけでもなく、支援者、家族、観客とあらゆる人々が安心して過ごせる場を提供する目的で、2010年のバンクーバー冬季五輪で地元のNPOが始めた活動だ。

 その反響は大きく、翌年の2012年のロンドン夏季五輪・パラリンピック、16年リオデジャネイロ五輪、18年に韓国で行われた平昌冬季五輪までつながり、五輪のレガシー(遺産)として尊重される活動にまで発展している。今夏の東京大会でも組織委員会の公認プログラムとして、初の常設となり活動を展開する。

 IOCは2014年、「アジェンダ2020」を採択。五輪憲章が掲げる「オリンピズムの根本原則」を、「ムーブメントにおいて、差別を容認しない」とした従来の条文からさらに多様性を強調し、「憲章がうたう権利と⾃由の享受において差別を容認しない」と改定した。その中に、人種、肌の色、性、性的指向、言語、宗教、政治その他、と、LGBTQをも念頭に「性的指向」を初めて明記している。

 2019年、国内で大きな関心と感動を集めたラグビーのW杯でも、期間限定ながら五輪への試みとして「プライドハウス東京2019」が設置され、性的少数者への偏見や差別について、様々な角度からの啓蒙活動が実施され多くのファンが足を運んだ。

 サッカー界は、ジェンダーレスについては他の競技団体をリードする存在である。特に、世界No.1で、これまで女子W杯8大会のうち4回、オリンピックでも4回優勝を果たしている米国の女子代表チームのパワーは大きい。代表選手たちがカミングアウトや同性婚をオープンにする。FIFA(国際サッカー連盟)はIOCよりも早く「性的指向による差別の禁止」を憲章に明記した。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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