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コロナ禍は「観光地変⾰」最⼤のチャンス〜収束後に向け何をすべきか

地域の魅力の磨き上げ、ブランドの再形成、販路開拓……やるべきことは山ほどある

小松﨑友子 観光ブランディングプロデューサー/株式会社iNTO代表取締役

ブロガーのPR記事が陥る落とし穴

 過去、自治体や観光事業者が、発信力のあるブロガーに観光地をPRする記事を頼み、発注者の意向に沿って記事を書いた結果、観光地の実態との間にギャップがあり、実際に訪問した旅行者の不評を買うというケースが多々あった。

 海外の著名ブロガーなどを呼ぶと、“VIP待遇”で各地を案内することになる。ブロガーが招請で来ているかどうかは、発信した内容を見れば一目瞭然だ。一般の旅行者が使う公共交通機関を使わず、車で各地を移動しているため、電車の乗り継ぎなどのアクセス情報を自分では直接体験せず、伝聞だけで発信しているケースが多く、肝心な情報が抜けている場合が少なくない。

 弊社(iNTO)がヒアリングを行った訪日リピーターにも、次のような経験をした方がいた。

 ブロガーの情報をもとに、ある観光地を訪れたところ、「電車ですぐにアクセスできる。」と記事に書いてあり安心していたのだが、実際に行ってみると電車は1時間に1本しか走っておらず、行きたかった観光地を回りきることができなかった。「1時間に1本しかないので注意するように」といったコメントをなぜつけてくれなかったのか。

 こうした体験は「口コミサイト」に投稿され、マイナスの情報が拡散されてしまう。ネット上での拡散のスピードは速く、いったんそうしたレッテルを貼られた観光地が信頼を取り戻すには時間がかかる。情報発信をしたことが、マイナスな効果を生むという「負のスパイラル」に陥ってしまう。

 こうした正しい情報発信が出来ていないケースが日本全国で起きている。目的は「情報発信」をすることではない。国内観光者、インバウンドを問わず、自分たちの観光地にお越しいただくことだ。そこを見誤らず、観光地が置かれた実態に沿った情報発信を心がけなければならない。

「受入環境」で大切な2次交通の整備

 そのために何からはじめていけばよいのか。答えはシンプルだ。観光地における「共通課題を発掘・認識すること」と、「課題解決策を実行していくこと」に尽きる。

 共通課題は、「受入環境整備」と「観光コンテンツの磨き上げ」に集約されることが多い。

 「受入環境整備」とは、旅行者がストレスなく観光を楽しめる環境を整備することである。なかでも重要なのは「2次交通の整備」だと考えている。ちなみに2次交通とは、拠点となる空港や主要な鉄道の駅から観光地までの交通のことを指す。

 ふだんマイカーでの移動が多い地方では、公共交通機関が十分に整備されていないことが少なくない。だが、インバウンド観光客(台湾・香港からの訪日客をのぞく)は、レンタカーをあまり利用しない。国によっては、国際免許の取得ができないケースもある。

 それゆえインバウンド客にとっては、2次交通の整備がされているか否かが、行先選びの重要な条件となるのだ。くわえて最近は、国内旅行でも2次交通の重要性が増している。団体旅行から個人旅行への移行が年々進んでいるためだ。

淡路島の「バス&バスツーリズム」

 2次交通の問題にいち早く取り組んでいる地域に兵庫県淡路市がある。淡路島の公共交通機関はバスのみだ。そこで、行政と民間が共同でコミュニティバスの本数を増やしたうえで、近隣の空港・新幹線駅から高速バスに乗って淡路島へ来島した後、コミュニティバスに乗り換えて島内を巡る「バス&バス」モデルコースを淡路市商工会に所属する観光事業者を中心に造成して発信している。

拡大コミュニティバスで淡路島をめぐるモデルコースが掲載されている「あわじ島ごころ」

 「バス&バス」モデルコースの一例を紹介しよう。

 県外から来た一人旅の女性。いつもは神戸のみだが、今回の旅ではじめて淡路島まで足を延ばすことに。
 車の運転は苦手なので、三宮から高速バスで淡路島へ。津名一宮のバス停で高速バスを降りた後、コミュニティバスに乗り換えて日本最古の神社「伊弉諾神宮」へ。御朱印を頂いてゆっくり境内を散策した後、日本一のお香の産地である淡路島でオリジナルのお香づくりを楽しむために「薫寿堂」へ
 続いて淡路島の地産地消料理が楽しめる「鼓や」にて淡路島の旬の海の幸を存分に満喫。次に訪れた「パルシェ香りの館」の広大なお花畑での花摘み体験の後、瀬戸内海を見渡す「香りの湯」のハーブが香る温泉でリラックス。淡路島の西側を走る「淡路サンセットライン」沿いの「尾崎海水浴場」で瀬戸内海に沈む夕日を見ながらゆったりとした時を過ごし淡路島での一日がおわった。最後に、淡路島での時間を振り返りながら高速バスに乗り三宮へと帰る……

 こんな盛りだくさんなコースも、高速バスとコミュニティバスと一部の送迎バスで巡ることができる。これまでは車が運転できないと気軽に訪れることが出来なかった淡路島を、車が運転できない層(以下ノンドライバー層)でも周遊できるようにすることで、新たな客層の取り込みを目指しているのだ。

拡大淡路島の花と海と空を⼀度に楽しめる「あわじ花さじき」=淡路市商工会観光部会スペシャルサイト「あわじ島ごころ」より

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筆者

小松﨑友子

小松﨑友子(こまつざき・ともこ) 観光ブランディングプロデューサー/株式会社iNTO代表取締役

東京都出身。広告代理店を経て独立。日本の「旅」と「食」を国内外に発信するマーケティングプロデューサーとして、日本全国の自治体及び企業のブランディング・マーケティングに関する課題の解決に取り組んでいる。大の映画好きであり映画関係者のコミュニティを運営。株式会社iNTO(イントゥ)代表取締役、早稲田インバウンド・ビジネス戦略研究会メンバー。「ジャパン・ツーリズム・アワード」メディア部門賞受賞「インバウンド・ビジネス戦略」共著にて出版。

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