大空幸星(おおぞら こうき) NPO法人あなたのいばしょ理事長・慶應義塾大学総合政策学部生
1998年、愛媛県松山市生まれ。「信頼できる人に気軽・簡単・確実にアクセスできる社会の実現」と「望まない孤独の根絶」を目的に、あなたのいばしょを設立。孤独対策、若者の社会参画をテーマに活動している。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「子ども目線」にたたない政策で、苦しむ子をなくすために
自ら命を絶つ子どもが増えている。警察庁の調べによると、昨年の小・中・高生の自殺者数は前年比25.1%増の499人で過去最悪を記録した。
自殺者数だけではない。筆者が理事長を務める、NPO法人あなたのいばしょが運営する無料のチャット相談窓口に寄せられる相談は、増加の一途をたどる。
「新学期、学校に行くのがつらいです」「もう死にたいです」
多くの相談はこうした悲痛な言葉で始まる。昨年3月に窓口を開設して以来、1年間で4万8000件以上の相談が寄せられた。その約8割は29歳以下の子ども・若者からの相談で、小学校低学年の子どもたちからの相談も毎日寄せられている。
昨年は1日150件ほどであった相談が、2回目の緊急事態宣言が出された今年1月以降は1日200件ほどに増加し、感染が再拡大している現在では、1日500件以上の相談が寄せられる日が続いている。
コロナ禍以前から、全ての相談に応答することができないほど逼迫していた相談窓口は、さらに危機的状況に陥っている。社会の最後の砦として機能している相談窓口は、多くのボランティアによって成り立っているが、急増している相談を前に、この最後の砦をなんとか死守しようと、ボランティアは睡眠時間を削り、日夜相談に応じている。
しかし、これは美談でもなんでもない。
コロナ禍以前から子どもや若者の自殺の問題は悪化の一途をたどっていたにも関わらず、有効な対策が講じられてこなかった。いまそのしわ寄せがおきているのだ。
子どもの自殺を取り巻く現状は、異様と言える。
昨年の全年代の年間自殺者数は11年ぶりに増加に転じたが、それまでは2003年の3万4427人をピークに減少していた。実際、統計開始以来過去最少となった2019年の自殺者数は2万169人と、16年間で1万5000人近く減ったのだ。
しかしこの間、子どもの自殺だけは減らなかった。全体の自殺者数がピークとなった2003年の小・中・高生の自殺者数は318人であるが、2019年は399人と増加している。そして昨年は499人と、1年間で100人も増加した。当然、子どもの人口が減少し続けているなかでの数字であり、まさに異常事態である。
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