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日本は貧しくなり、デザインの敗北が蔓延した

金銭的に余裕のない社会ではスピード感が重視され検討にかける時間は無駄と見なされる

赤木智弘 フリーライター

 「デザインの敗北」という言葉をご存じだろうか。

 この言葉がネットで注目されだしたのは、コンビニチェーンにセルフタイプのコーヒーマシンが導入され始めた頃だ。有名デザイナーによってデザインされた高級感あるおしゃれなコーヒーマシンに、店側から「ホット(レギュラー)」「アイス(Lサイズ)」などと貼られてしまう事態が発生したのである。

 理由としては単純で、コーヒーマシンはおしゃれであったが、おしゃれさにこだわるあまりコーヒーを買うために必要な情報を客が正しく読み取れず、操作間違いが多発していた。そこで店舗レベルでは、英語で統一されたハズのおしゃれなコーヒーマシンに、分かりやすい日本語のラベルを貼り付けることで対応するしかなかったのである。

 最初からこのコーヒーマシンは「客に操作してもらうマシン」として企画されていた以上、ラベルを貼らなければ、その操作が客に伝わらないデザインにしたことが悪いことは言うまでもない。

 こうした「おしゃれさを優先したせいで、その機能が正しく伝わらない失敗したデザイン」を指して「デザインの敗北」とネット上では呼んでいるのである。他にも「標準的でないピクトグラムを使ったために、まったく存在感のないトイレの表示」とか「目が不自由の人のための点字ブロックをデザインに組み込んで使いにくくしてしまう」などの失敗事例がそう呼ばれている(「デザインの敗北事例集~人に伝わらないデザインは死ぬ~」)。

ローソンのPBと温水洗浄便座

拡大ローソンの看板

 最近、このデザインの敗北に関するニュースを2つほど見かけた。1つはコンビニエンスストア「ローソン」のプライベートブランド(PB)のパッケージが変更になったという話題だ。

 ローソンでは昨年春にPBのパッケージ変更をおこなったが、これが「分かりにくい」と不評だった。パッケージイメージが強く統一され、文字も小さめでシンプルになったことにより「おしゃれで映える」という評価もあったものの、別商品であっても同じような見た目であるために分かりにくいという意見も多かった。

 また、商品の中には日本語よりも英語表記が中央に大きく表示されているものもあり、中でも中央に大きく「ABURA AGE」と書かれた商品は「エイブラエイジって何だよ」などと失笑されていた。ちなみにABURA AGEの下には少し小さく「油揚げ」と書かれている。

 これらの分かりにくいパッケージが少しずつ変更され、デザインのモチーフはそのままに、商品の写真が大きく分かりやすくなったり、日本語表記が中央になったりしているということが、話題になっていた。

 もう1つが、駅やデパートなどのトイレで「ボタンがありすぎて洗浄ボタンが分かりにくい」という話題である。僕が見た記事では、障害者にとって使いにくいという話だったが、健常者である僕にも思いあたることがある。

 僕が「洗浄ボタンどこ?」と強烈に感じたのは、便器の操作パネルの正面に「洗浄ボタン」がなく、操作パネルの上面の縁に洗浄ボタンがある機種が出てきた時である。あのタイプを初めて見たときに、とても意地悪なデザインで腹立たしかったことを覚えている。

 最近は不特定多数の人が使う共用トイレでも温水洗浄便座である場合が増えているが、それらのパネルに「俺様が主役でござい」とばかりに、温水洗浄のボタンがメインであるかのように鎮座していて、流すボタンが邪魔者であるかのように端に追いやられているのは、どうかんがえてもおかしい。

 温水洗浄便座でも温水洗浄機能を使わない人はいても、トイレを流さない人はいないのだから、洗浄ボタンこそ主役であり、分かりやすい正面に配置するべきだろう。

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筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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