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トリチウムと水の理科・社会 【下】

処理水の問題は「理科」ではなく、「社会」にある

児玉一八 核・エネルギー問題情報センター理事

処理水の放出にあたってのトリチウム濃度

 政府は4月13日に決定した多核種除去装置(ALPS)処理水の海洋放出方針(*1)によれば、トリチウム濃度は1500Bq/L未満にするとしている。これは現在行われている福島第一原発のサブドレンや地下水バイパス等を排出する際の運用目標と同じ水準である。なお、この運用目標の詳細は以下のようになっており、告示濃度比総和は0.219となる(表2)。

 福島第一原発敷地内のタンクに保管している水のトリチウム濃度は、約15万~約250万Bq/L(加重平均73万Bq/L)であり、1500Bq/Lにするためには約100~約1700倍(加重平均500倍)の希釈が必要となる。ALPS処理水を100倍以上に希釈すると、希釈後の告示濃度比総和(トリチウムを除く)は0.01未満となる(*2)

拡大表2 サブドレン、地下水バイパス等の排水にあたっての運用目標(※ おおむね10日に1回の頻度で1Bq/L未満を確認)

拡大

 多核種除去装置(ALPS)は、トリチウム以外の62種類の放射性物質を除去して、排出規制値(告示濃度比総和1)以下にするとして2013年に供用が開始された。その後、除去性能の不足や低下が認められたため、吸着塔の増塔、吸着材の変更、処理プロセスの改善などが行われたが、2020年12月末で告示濃度比総和1以下となって

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筆者

児玉一八

児玉一八(こだま・かずや) 核・エネルギー問題情報センター理事

1960年福井県武生市生まれ。1978年武生高校理数科卒業。1980年金沢大学理学部化学科在学中に第1種放射線取扱主任者免状を取得。1984年金沢大学大学院理学研究科修士課程修了、1988年金沢大学大学院医学研究科博士課程修了。医学博士、理学修士。専攻は生物化学、分子生物学。現在、核・エネルギー問題情報センター理事、原発問題住民運動全国連絡センター代表委員。著書:単著は『活断層上の欠陥原子炉 志賀原発―はたして福島の事故は特別か』(東洋書店)、『身近にあふれる「放射線」が3時間でわかる本』(明日香出版社)、共著は『放射線被曝の理科・社会―四年目の「福島の真実」』(かもがわ出版)、『しあわせになるための「福島差別」論』(同)、『福島第一原発事故10年の再検証』(あけび書房)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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