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開催反対の逆風と、好記録を生んだ追い風を受けた東京五輪マラソンのテストイベント

開会式まで残り70日を切ろうとする今大会の現状

増島みどり スポーツライター

突然の札幌移転から約1年半、未知のコースを完走した選手たちの手応え

 5月5日、札幌で東京五輪の、マラソンテストイベントして行われた「北海道・札幌マラソンフェスティバル」(ハーフマラソン=男子58人、女子11人の合計69人、ほかに10キロも開催)は、設営されていたテントや看板が吹き飛ばされるほどの強風に見舞われ、13度の気温より体感気温がぐっと寒く感じられる悪条件下でスタートした。

 日本の男女代表6人のうち、大迫傑(ナイキ)、ケガで欠場した中村匠吾(富士通)をのぞく、7人が出場。新型コロナ感染防止対策のため、選手は事前と、滞在中の検査、札幌まではチャーター便の利用、交通公共機関の利用禁止、またホテルでは部屋で食事を摂る、外出は練習とレース会場のみと、制限された隔離状態でレースに臨んでおり、五輪での適用される感染予防ルールにおいても貴重な「テスト」でもあった。

 高温多湿のドーハ世界陸上(2019年)で、マラソン、競歩に棄権者が続出した危機感から、IOC(国際オリンピック委員会)は東京で行われる予定だったマラソン、競歩を突如、札幌へ移転。札幌には北海道マラソンの実績はあるが、五輪で採用する周回コースは別に設定する必要がある。雪のため計測や視察の困難となる冬季を挟んでコース図を描くなど、現場、選手は困惑したはずだ。しかし、さまざまな不安を払拭する実践に安堵したようだ。

 強風は、選手にとって南からの「追い風」となり、女子では一山麻緒(ワコール)が自己新記録となる1時間8分28秒の好タイムで優勝。「かくかくしている(コーナーが多い)印象でしたが、フラットで走りやすかった」と、宣言していた自己新に充実感を漂わせた。昨年12月の実業団駅伝以来ケガに苦しみ、レースを遠ざかっていた鈴木亜由子(日本郵政グループ)も完走を果たし1時間8分53秒で3位に。事前に足を痛めながら出場した前田穂南(天満屋)は5位に食い込んだ。

拡大女子ハーフマラソンで優勝し、インタビューに答える一山麻緒=2021年5月5日 、札幌市

 男子では、服部勇馬(トヨタ自動車)が24位ながら、想定していた以上のペースを自然と刻めるコースとの相性や、難所とされる北大内の7つのカーブもうまく、「とても自信になった。五輪ではもう少し速くなるのではないか。これから足作りにしっかり取り組みたい」と、手応えを見せた。

 1時間0分46秒で優勝したケニアのヒラリー・キプコエチは「フラットでスピードに乗りやすいコースだった。もし(同じケニアのマラソン世界記録=2時間1分39秒の保持者)キプチョゲなら自己新をマークして伝説になるのではないか」と、世界新記録さえ可能な、走りやすいコースだったと推す。

 また、徹底した感染予防対策についても「厳しいのは当然で守るべきルールが明確だったため、感染に不安を感じることはなかった」(女子のシュタインリーク=ドイツ)と、選手に混乱した様子はなかった。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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