メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

コロナ禍 「女性だけ」のための施策や支援がなぜ必要なのか

取り残されずに制度や支援へアクセスできるようになるためには

松元千枝 ジャーナリスト

 「女性専用」や「女性限定」と名打つと、必ずと言っていいほど「逆差別だ」と批判的な指摘がある。3月13日と14日、新型コロナウイルスが猛威を振るう中、都内新宿区の大久保公園において「女性による女性のための相談会」を実施すると宣伝したところ、やはりこうした声が寄せられた。

 なぜ、女性だけに限定する必要があるのか――。

 女性は常に誰かの世話をすることを求められ、期待されることが多い。子どもや親や、夫の生活あるいは健康を優先するため、自分のケアは自然と後回しにせざるを得ない。あるいは、自分が抱える問題を問題と認識しないことさえある。

 身体に不調をきたしても医療機関へのアクセスが遅れ、病状が悪化したという例は後を絶たない。特に、コロナ禍で家族の生活習慣が一変し、同時に女性が多く働くと言われるサービス業や飲食業が営業自粛や事業閉鎖に追い込まれた状況下では、あえて女性が気兼ねせず、自分の悩みを相談できる環境を作る必要がある。

 日頃からその必要性を痛感していた、市民団体、労働組合、日本労働弁護団などから女性有志60人が集まり、「女性による女性のための相談会」を企画した。筆者も日本新聞労働組合連合(新聞労連)の一員として実行委員会の設置を呼びかけ、相談会にも相談員として参加した。

拡大生活が困窮する女性を公的支援につなげるよう、小池百合子知事への要望に訪れた「女性による女性のための相談会」実行委員会のメンバー(左から4人目が筆者)=2021年3月2日、東京都庁

ボランティアも含め、相談員は全員女性

 それにはあらゆる配慮が求められた。

 ボランティアも含め、相談員は全員女性にすること。労働、生活、法律に加えて、家族や家庭のこと、性暴力被害、妊娠や子育てに関する悩み、そして心と身体の健康について落ち着いて話ができるブースを設置した。子ども連れでも安心して時間がとれるよう、託児サービスも用意した。

 2日間で寄せられた相談は122件。仕事に関する内容がもっとも多く、次に心と身体、住まい、ハラスメント、食事と続いた。大半の女性は何かしらの暴力被害の経験があり、精神的な不調を訴えた。

 親からの虐待に始まり、学校でのいじめ、通学・通勤途中の痴漢、性暴力、職場でのセクシュアル・ハラスメントやパワーハラスメント、夫からのDVなど、女性は生きてゆく上であらゆる形の暴力に遭う。

 国連の「世界の女性2020」調査では、女性の3人に1人が近しい人からの身体的あるいは性的暴力に遭うとされ、こうした暴力を「陰のパンデミック」と呼ぶ。また、メディア業界限定ではあるものの、2018年夏に実施された日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)のアンケートによれば、女性は平均して5種類のセクハラや性暴力に遭うことがわかっている(注)

 こうした女性への暴力被害は、膨大な社会的、経済的損失を生み、国によってそれはGDPの3.7%に上るとも言われている。(2019年、世界銀行)

 女性の労働には、低賃金、不安定雇用が代名詞となっていたが、その上にハラスメントという悪条件3点セットが目立つようになった。「女性による女性のための相談会」に寄せられた相談事例にも反映している。

拡大生花が置かれた相談会場=2021年3月13日、東京都新宿区 「女性による女性のための相談会」実行委員会提供

(注)「不必要な身体接触」が最も多く、「容姿や年齢、身体的特徴などについて聞かれた、からかわれた」「『結婚しないの?』『子供生まないの?』などの自己決定権に関わる質問をされた」などが続く

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

松元千枝

松元千枝(まつもと・ちえ) ジャーナリスト

メディア協同組合Unfiltered(アンフィルター)エディター。法政大学法学部メディア分析非常勤講師、東京大学大学院情報学環学術支援員。英字記者、海外通信社で東京特派員として勤務したのちに独立。共著に『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋、2020年)、共同翻訳には『世界を動かす変革の力〜ブラック・ライブズ・マター共同代表からのメッセージ』(明石書店、2021年)、『ストする中国』(彩流社、2018年)などがある。

松元千枝の記事

もっと見る