「オリンピック? いつなの? 東京だっけ? 夏の? 冬の?」
2021年05月18日
東京オリンピックの開催日を2カ月後に控えた現在だが、どこからも明るいニュースは聞こえてこない。
長年シカゴ・トリビューン紙のスポーツコラムニストを務めてきたフィル・ハーシュ氏は、5月13日付のオピニオン欄に「COVID-19のパンデミック中に東京夏季五輪を開催することは、IOCの傲慢の象徴」というタイトルの、厳しい意見を発表した。
40年の記者生活で19回のオリンピックを取材してきた同氏は、五輪がどれほど特別な祭典なのか熟知し、肌身で実感してきた。その彼が、過去4年間の人生をこのオリンピックに捧げてきたアスリートのことを思うと心を引き裂かれるとしながらも、「現状での東京オリンピック決行は、悪魔との取引も同然」と言い切る。
その他にもABC、CBS、ワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなど、多くの米国大手メディアは、開催に対する疑念の声を続々と報道し続けている。
メディアが報道する識者たちの意見は開催反対一色だが、米国の一般人の東京オリンピックに対する意識はどのようなものなのだろう。
東京オリンピックのボランティアに申請したというニューヨーク在住の20代の女性、オージュさんは筆者にこう語った。
「結論を先に言えば、東京オリンピックは、出場するアスリートたちが希望するのなら、開催されるべきだと思います。とはいえ、私自身がボランティアとしてパンデミック中に東京に行くだろうかと聞かれたら、考えてしまいます(彼女の申請は受理されなかった)。東京、そして次のオリンピックの受け入れ国側が、どのような方法でアスリートや関係者、ボランティア、そして国民の身の安全を守るつもりなのか。成功すれば、世界中がそれを見習うでしょう。世界中の目が、今、東京に集まっています」
もっともオージュさんのように、東京オリンピックの成り行きに注目しているアメリカ国民はごく少数派である。筆者の住むニューヨークでは、一般人の間での東京オリンピックに対する関心は、ごく控えめにいって、非常に低い。
「東京で本当にオリンピックができると思う?」とこちらから話題にすると、よほどのスポーツファンでない限り、ほとんどの場合「オリンピック? それって、いつなの?」「東京だっけ?」「夏の? 冬の?」という、悲しいほど薄い反応が返ってくる。
これほどの無関心のそもそもの理由は、パンデミックとは直接関係ない。知り合いのスポーツエージェントはこう本音を漏らす。
「2018年平昌、2020年東京、2022年北京と3度のオリンピックが、連続してアジア開催になったことは、アメリカ人にとってちょっと気分が白けたと思う。PyeongChang、Tokyo、Beijingと都市の名前を並べても、それがどこの国なのかすら知らない米国人も、少なからずいるのが現実ですから」
これはアメリカに限った話ではないが、開催地が自国か近国かどうかで、人々の興味の度合いは天地の差が出る。特にアメリカの国民は、
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