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Jリーグで初の女性主審誕生

プロリーグ、プロ指導者養成とサッカー界のジェンダー改革に期待

増島みどり スポーツライター

 5月16日に行われた、J3の「YS横浜」対「宮崎」の一戦(ニッパツ三ツ沢球技場、宮崎2-0で勝利)は、試合同様、Jリーグ史上初の女性主審を務めた山下良美審判(35)の笛にも大きな注目が集まった。

重責のデビュー戦、最初の大仕事、イエローカードを的確に出す

 山下氏は、いつも通り落ち着いていたようだ。「(審判として)難しい場面は特にありませんでした。あえて言うなら、コイントスが一番難しかったです」と、緊張する様子もなく自然体で試合に臨んだと振り返る。そうした冷静さ、ジャッジへの揺るぎない自信を示す場面が開始早々の10分に訪れた。

 宮崎のGK植田峻佑が、裏に抜け出そうとしたFWンドカ・チャールスをファウルで止める。このプレーに対して、躊躇なくイエローカードを出した。日本サッカー協会の審判委員会・黛俊行委員長も「最初の笛がイエローカード、というのも歴史的ではないか」と、堂々とした判定を称え、試合後、警告を受けた植田自身がツイッターで「素晴らしいレフェリングで、ノーストレスで試合に臨めました」と、新たなコンダクター(指揮者)を歓迎する。

 17日、一夜明けてオンラインで行われた会見では「ホッとした気持ちが一番です」と、胸をなで下ろし笑顔を見せた。5月15日、1993年の開幕から28年の記念日を迎えたばかりのJリーグは、29年目に入って2日で、女性主審誕生の新しい歴史をも刻んだ。

 山下氏は東京都出身で、幼稚園の頃、兄の影響でサッカーを始め、将来はサッカー選手を夢見ていたという。東京学芸大学の先輩で、同じく審判となった坊薗真琴(ぼうぞの・まこと)に審判に誘われた。初めての経験を「審判の存在は、(選手だった)自分には全く見えていませんでした」と苦笑するように、興味はなかった。しかし審判が、戦術的な視線を持てば指導者にもなれるし、予測もできなかったプレーを間近で見ると選手としての楽しさも味わえる。「サッカーをより深く、楽しく見られるポジションだと気が付いて」(同氏)、先輩たちのレフェリングを見て学ぼうと、向上心が沸いた。また、男子の試合に負けない持久力、スピード、瞬発力を鍛えるため、毎日2時間のトレーニングを欠かさない持ち前の頑張りもキャリアを支える。

 2012年に女子1級審判員のライセンスを取得し、なでしこリーグなどで活躍。2015年からは国際審判員として、数々の国際大会で実績を積む。2019年に男子トップリーグを担当できる1級審判員の資格を取り、今年、Jリーグの審判員リストに名を連ねた。

 FIFA(国際サッカー連盟)は17日、過去の山下氏のインタビューを再掲し「歴史が作られた」と、日本サッカー界の快挙として賛辞を送った。山下氏は東京五輪の審判団にもリストアップされている。

拡大山下良美審判=2019年5月21日、東京都文京区の日本サッカー協会

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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