古代インドの雅語「純粋・輝き」というその名の通りに
2021年05月22日
ソダシという一風変わった名前を知ったのは、昨年7月の函館競馬の時である。調べてみると古代インドの雅語であるサンスクリット語で「純粋・輝き」という意味をもつという。名は体を表す、なるほど見れば人目を惹く真っ白な馬であった。
昨年7月12日の2歳新馬デビュー戦以来、5戦5勝。〝無敗〟と騒がれ白星が重なるほどに白毛馬の人気は高まっていった。
もとより、血脈がモノを言うサラブレッドの世界において、稀少な白毛馬が勝ち続けるのは稀なる偉業であるうえに、その姿のかわいらしさから、今やアイドルホースへと邁進し、JRAのぬいぐるみが秒殺で完売する勢いである。いわんや先月(4月11日)、3歳牝馬の頂点を決める一戦、桜花賞のGⅠタイトルを掌中に収め、来る5月23日には、第2冠目のオークスに臨むとあっては、連日スポーツ紙にソダシの一挙手一投足が載るのも頷ける。
私がソダシを注目するようになったのは、白毛馬だからでも、無敗の強さでもなく、ソダシを調教する須貝尚介調教師のひと言からであった。
競馬はレースの前に、馬の状態がどうであるか、稽古の仕上がりがどうであるかなど、馬を管理する厩舎の調教師が語る。厩舎情報は、馬券を買う際の参考になる。その厩舎情報の中で、須貝調教師はソダシのことを「可愛すぎる」と言われたのである。馬の体調や、稽古のタイムや、向かうレースの距離適性云々ではなく「可愛すぎる」である。「可愛すぎる」のが、馬券を検討する際の有力な手掛かりになるのかどうか、その素っ頓狂なコメントに、思わず笑ってしまった。
しかし、昨夏の北海道競馬で「可愛すぎる」と目を細めて微笑む調教師と新馬のソダシに出会ってからこっち、その須貝調教師の可愛くてしかたがないという眼差しが、ソダシをオークスまで導いたのではないかと思えてならない。
4月に行われた桜花賞は、3歳牝馬三冠(桜花賞・優駿牝馬オークス・秋華賞)の第一関門で、JRAの重賞(GⅠ)レースである。そのレースにソダシが臨む際も「緑のターフに真っ白い花を咲かせられたら」と、またも夢みる眼差しの須貝調教師のことばにくすぐられた。
勝ち負けよりも、新緑の輝く馬場でソダシが駆けることを思い描いているように見えた。ソダシの系譜は、ダート適正といわれ、力のかかる馬場は得意な血統であるという。ゆえに、良馬場でなくても、ちょっと渋った馬場のほうがソダシには有利といわれるが、そんなことよりも、きれいなソダシが汚れることのほうがイヤなのではないだろうかと、訝ってしまうほど、ソダシの身だしなみには気を遣われていた(聞くところによると、ほかの馬より何倍もはやくシャンプーが減っていく
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