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[53]雨宮処凛さんと語る「コロナ禍の生活苦と住まいの貧困」~野戦病院の現場から

底が抜け続ける社会で求められる政策とは

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

住まい失う人々。高まる入居のハードル

拡大「住まいの貧困に取り組むネットワーク」の設立集会。パネリストの左から2人目が筆者=2009年3月14日、東京都新宿区

稲葉 住まいの貧困ネットは、リーマンショックの後、2009年に設立をしたのですが、当時、焦点になっていたのは賃貸住宅の「追い出し屋」問題でした。家賃を1~2ヶ月、滞納しただけで、大家や不動産業者、家賃保証会社が法律を無視して、賃借人を無理矢理、追い出してしまうのが社会問題になっていたのですが、各地で追い出された被害者を支援する弁護士が損害賠償訴訟を起こして勝訴したので、一定、追い出し行為を抑止できるようになりました。

拡大雨宮処凛さんとの対談で発言する筆者=2021年5月19日、衆議院第二議員会館
 昨年の3月にコロナ禍が始まって、また追い出し行為が増えるのではないかと懸念したので、住まいの貧困ネットで「すべての家主、不動産業者、家賃保証会社への緊急アピール」というのを出しました。これは、「家賃を滞納する人を立ち退かせるのはやめてください。追い出すではなくて、立場を越えて政府に公的支援の充実、家賃の保障を求めましょう」という内容でした。

 それから1年以上が経って、住まいを失う人が増えてきているわけですが、「追い出し屋」の相談は実はあまり増えていません。それはなぜなんだろう、ということを関係者で議論しているのですが、おそらく2つの要因があると思われます。

 1つは、未だに「賃借人に居住権がある」ということが知られていないので、家賃を滞納しそうになったら、自分から身を引いて出てしまう人が多いのではないかと思っています。

雨宮 特に女性にはそういう人が多いですね。

稲葉 もう1つは、賃貸住宅に入るハードル自体が高くなっているという問題です。東京では、部屋を借りる時に個人の保証人ではなく家賃保証会社を利用するのが一般的になっていますが、保証会社は家賃滞納の履歴がある人のデータベース、ブラックリストを作っているので、滞納歴がある人が部屋を借りにくくなっています。また、初期費用も高いので、そもそも不動産屋経由で部屋を借りること自体が難しくなっているわけです。

 部屋を借りられない人たち、特に若い人たちはシェアハウスに暮らしていることが多いのですが、シェアハウスの場合、賃貸の契約があいまいになっているところが多く、少し家賃を滞納しただけですぐに追い出されてしまう、という話をよく聞きます。

シェアハウスの危険性。中身は「貧困ビジネス」の業者も

拡大筆者との対談で発言する雨宮処凛さん=2021年5月19日、衆議院第二議員会館

雨宮 そもそもシェアハウスが全国に何軒あって、何人が住んでいるかというデータさえない、という話を研究者の方から聞いたことがあります。そういう状況ですから、この一年間に何人がシェアハウスから追い出されたか、ということもブラックボックスになっているわけですよね。

 シェアハウスの中には、ホームページを見ると「住民同士、楽しく交流しています」という「キラキラ系」のアピールをしているところもありますが、そういうところでも家賃を1ヶ月滞納しただけで追い出されています。しかも契約書にすごく小さい字で「2年以内に退去する場合は10万円を支払わなければならない」という規定が書かれてあるようなところもあるわけです。お金がないから家賃を滞納しているのに、10万円なんて払えるわけがない。一見、「キラキラ系」ですが、中身は「貧困ビジネス」と変わらないところも少なくない。

 また、ダイエットなどの「コンセプト系シェアハウス」では、体脂肪率と家賃が連動しているところもあるそうす。そういうところでは、肖像権についても契約書を書かされて、顔出しでインタビューを受けるなどPRに協力すると初期費用が安くなったりするそうですが、ネットで顔を出して、どこに住んでいるのかもわかるということは、ストーカー被害に遭うリスクもあって、非常に危険です。

 シェアハウスには厳しい規制がなくて、誰でも登録をすることなく開設することができます。そこに住んでいる人で、一番多いのは20代の女性で、非正規で収入が少なく、アパートの初期費用を払えないからシェアハウスを選んでいる、という人も多いようです。シェアハウスへの規制も必要だというのは省庁にも訴えていく必要があります。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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