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五輪強行に各紙論説の「疑義」「中止」続々〜社論の潮目は変わった

地方紙先行、朝日・毎日も。世論に押され、“国民を犠牲にするな”

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

拡大五輪マークのモニュメント=2021年5月9日、東京都新宿区
 本当に開催するのか。

 東京オリンピック・パラリンピックをめぐる新聞各社の論調が、大きく変わってきた。この5月23日には信濃毎日新聞(長野県)が社説で「東京五輪・パラ大会 政府は中止を決断せよ」と迫ったことが話題になったが、その他の新聞も開催を強行しようとする政府に対し、相次ぎ疑問や懸念を表明している。「論説・社説」の潮目は変わった。

拡大東京五輪開催に疑義や中止を唱える地方紙各紙の社説の見出し

信濃毎日の迫力「中止すべきだ。意義はどこに。分断招く」

 筆者は今年1月18日、論座で『「東京五輪中止」の現実味をスルーする日本マスコミの病理』を公開した。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、五輪開催が危うくなりつつあるのに、その現実を正面から取材し、世に問い掛ける姿勢が新聞・テレビに見られない、という趣旨だった。あれから4カ月。「五輪より国民の命を大事に」という圧倒的な世論に突き動かされ、マスメディアの論調も明らかに変わってきた。

 政府に東京五輪の中止を迫った信濃毎日新聞の社説は「崩壊する医療体制」「開く意義はどこに」「分断生じる恐れも」という3つの小見出しを掲げ、次のように論じた。

 7月23日の五輪開幕までに、感染状況が落ち着いたとしても、持てる資源は次の波への備えに充てなければならない。東京五輪・パラリンピックの両大会は中止すべきだ。

 菅義偉政権は地域医療への影響を否定するけれど、医療従事者を集められるなら、不足する地域に派遣すべきではないのか。検査も満足に受けられない国民が『五輪選手は特権階級なのか』と、憤るのも無理はない。東京大会組織委員会などは既に海外からの観客の受け入れを断念した。選手との交流事業や事前合宿を諦めた自治体も多い。各国から集う人々が互いに理解を深め、平和推進に貢献する五輪の意義はしぼみつつある。

 菅首相は大会を「世界の団結の象徴」とする、別の“理念”を持ち出した。何のための、誰のための大会かが見えない。反対の世論は収まらず、賛否は選手間でも割れている。開催に踏み切れば、分断を招きかねない。

拡大新型コロナウイルス感染症対策本部の後、首相官邸で記者の質問に答える菅義偉首相。後方には東京五輪・パラリンピックのマスコット人形が飾られている=2021年4月1日
 新聞社の社説・論説にかつての重みはない。読者の「紙」離れも著しく、社説・論説に目を通す読者は激減している。社説の動向に気を揉む政治家や官僚も、相当に減っただろう。それでも、各紙がそのブランドを懸けた主張には、今も一定程度の重みはある。前掲の信濃毎日新聞のように、覚悟を決めたかのような論説には迫力もある。

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筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

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