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五輪強行に各紙論説の「疑義」「中止」続々〜社論の潮目は変わった

地方紙先行、朝日・毎日も。世論に押され、“国民を犠牲にするな”

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

拡大観客がいない中、万博記念公園で走る元五輪選手で聖火ランナーの寺川綾さん=2021年4月13日、大阪府吹田市

高知「中止も選択肢に」、神戸「中止を含めた議論も」

 もっとも、信濃毎日新聞が「中止せよ」と迫る前から、各紙の論調には明らかな変化があった。

 信濃毎日の社説掲載に先立って、社説の見出しに「中止」の文字を使ったのは高知新聞だ。5月12日の「東京五輪・パラ 中止も選択肢に議論を」である。

 競泳の池江璃花子選手に代表辞退や五輪開催への反対メッセージを求める声がSNSで寄せられたことに言及し、本来なら中止を求める声が向かうべき先は、政府や大会組織委員会、IOCだと主張。政府に具体的なコロナ対策と徹底した説明を求め、こう締めくくった。

 7月23日の五輪開幕まで残された時間は少ない。国民が「強行」と感じてしまうような東京五輪・パラリンピックになってはならない。中止の選択肢も含めて、五輪開催の是非を議論すべき時である。

 神戸新聞の社説は5月17日、「コロナ禍 五輪への逆風 安全な大会の姿見えない」を掲げた。

 残された時間は少ない。首相は開催の可否についての判断基準も明確に示すべきだ。「開催ありき」でなく、中止を含めた議論もちゅうちょしてはならない。
拡大聖火リレーがあったJR双葉駅前(下)。住民が戻っていない町内は更地が目立つ=2021年3月25日、福島県双葉町、朝日新聞社ヘリから
拡大聖火リレーが福島県内からスタートした日に、「コロナ禍で五輪どころではない」と開催中止を訴える市民=2021年3月25日、福島県のJR郡山駅前

地方紙では4月から厳しい論調次々に

 地方紙の社説・論説には4月中旬ごろから厳しい論調のものが目立ってきた。表現は気を遣いつつも、実質的には五輪の開催中止を促しているものも少なくない。「地方紙」と呼ばれはするが、各紙はそれぞれの都道府県で大きな影響力を持っている。日本全体の部数を合計すると、全国紙と地方紙はほぼ半々だ。北海道や東海、北陸、中国、四国などは地方紙の牙城であり、全国紙の影響力はかなり限定的だ。

 それら地方紙に掲載された社説・論説の見出しを並べてみよう。G-Searchなどのデータベースを用いて、予定通りの五輪開催に疑義を唱えていると筆者が判断したものをいくつか抜き出した。

拡大東京五輪のマラソンコースとなる大通公園近くで医療従事者への定期的なPCR検査実施を訴える看護師ら=2021年4月16日、札幌市中央区

「五輪開催の可否 冷静で合理的な判断を」(北海道新聞、5月23日)
「東京五輪 無観客開催も 国民の理解得られる結論を」(河北新報、5月1日)
「五輪の開催判断 首相は国民を見ているか」(新潟日報、5月11日)
「五輪開催の可否 判断時期と基準を示せ」(北日本新聞、5月15日)
「コロナと東京五輪 このままでは支持されない」(大阪日日新聞、5月10日)
「東京五輪開催可否 IOC任せは許されない」(徳島新聞、5月8日)
「東京五輪まで2カ月半 説得力ある開催理由を」(熊本日日新聞、5月7日)
「東京五輪 国民の不安解消が前提」(南日本新聞、5月14日)
「コロナと東京五輪 この状況での開催なぜ」(沖縄タイムス、5月10日)
「本島聖火リレー縮小 五輪の是非を見極めよ」(琉球新報、4月18日)

共同通信「健康犠牲の開催あり得ぬ。その気になれば首相は中止、延期できる」

 この間には共同通信社の論説委員が論説「東京五輪に大義はあるか 『誰のため』問い直そう」を加盟紙各社に配信した。

 そのなかで「選手や市民の生命、健康を犠牲にする五輪開催は、理屈から言ってあり得ない」「昨春『選手、観客のために』と1年延期をIOCに提案したのは安倍晋三前首相だ。菅首相もその気にさえなれば中止、延期を実現できる」と明確に記されている。

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筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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