メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

サッカー五輪代表 オーバーエージ(OA)の3人と共に金メダル獲得へ始動

7月22日の開会に向けて準備は加速

増島みどり スポーツライター

 7月23日に始まる東京オリンピック開会式まで2カ月を切り、開会式より一足早く競技をスタートさせるサッカーU-24(24歳以下で構成される)代表は、6月にガーナ、ジャマイカとの親善試合を組んで五輪への準備を加速させている。すでに組み合わせも決定し、出場各国ともキャンプを予定通りに行うなど、開催反対が圧倒的とされる世論とは違い、サッカー界のベクトルは7月22日の開会に向けて絞られているように映る。

OAに初の海外組3人、しかも全員代表主力で示した本気度

拡大サッカー日本代表の森保一監督

 コロナ禍で徹底した感染予防対策、それはファンとの共同作業でもあったが、厳しいルールを自分たちで作りあげ、Jリーグは昨年も1042試合(観客計361万5066人)を実施。代表も海外組の来日など難しい対応を強いられながらも、関係者との折衝、活動を続け、クラスターを出していない。こうした結果への自信や周囲からの信頼が、開催に向け、いつもと変わらない独自の熱気を生んでいるのだろう。

 五輪代表は6月5日福岡でガーナと、12日は豊田でジャマイカと対戦し、今回のメンバーには、吉田麻也(イタリア・サンプドリア)、酒井宏樹(仏・マルセイユ)、遠藤航(ドイツ・シュツットガルト)の3人が年齢制限のないOAに選出された。通常は23歳以下が出場する五輪サッカーは、1年の延期に伴い、1997年1月1日以降に生まれた24歳以下での構成を認めた。日本はアトランタ以降7大会連続11回目の出場となり、過去6大会では、4大会でOA枠を使って来た。

 今回でOA使用は5大会目となるが、初めて、3人全員が欧州のクラブで先発する海外組の選手となり、加えて3人とも日本代表の先発を務める主力となった。自国開催の五輪に、68年のメキシコ大会以来となるメダル獲得のみならず、「金メダルを狙う」と宣言する森保一監督の決意、日本協会の覚悟といった「本気度」をストレートに示す布陣ともいえる。

OA採用を実現させるための交渉と、大会成績の因果関係

拡大アトランタ五輪でブラジル代表を破った日本代表=1996年7月21日、米国マイアミ

 メキシコ大会以来の五輪復帰を果たした1996年のアトランタでは、西野朗監督指揮下でOAは採用せず、OAを採用した世界王者・ブラジルを初戦で破って「マイアミの奇跡」と世界中で注目された。当時、西野監督は「日本は使わなかったOAの隙をつく」と、代表選手たちとの連携が取れていなかったブラジルのDFラインを狙い、その通りのミスから1点を奪った。

 トルシエ監督が率いた2000年シドニーでは、GKの楢崎正剛、DF森岡隆三、MF三浦淳宏を起用してベスト8に進出。監督が、代表と五輪両方を兼任監督として束ねていたのも結果につながった。山本昌邦監督が指揮を執ったアテネではGK曽ヶ端準、MFの小野伸二2人を使ったが予選で敗退。現在はサッカー協会で強化のトップに立つ反町康治・技術委員長が監督だった北京は採用していない(予選敗退)。吉田がOAで出場したロンドンは、ほかに徳永悠平も選ばれ44年ぶりの4強に進出を果たしている。

 OAが加わると好成績を導くように見えるが、16年リオデジャネイロ大会は、DFに藤春廣輝と塩谷司、FWに興梠慎三とJリーグのレギュラーを呼んだものの、興梠はPK1点、藤春はオウンゴール、塩谷も失点に絡んでしまうなど、チームに貢献する働きも不完全燃焼のまま、個人としての活躍もできなかった。

 OA起用を結果につなげるためには選手とチームのマッチング、また、合流のタイミングが極めて重要な要素となる。

 「(開催国枠で)予選を戦っていない時間的利点、森保監督が兼任する組織的利点、その両方を最大限に使わなくてはならないと目標を正確に定めて来た」

 自らはOAを使わなかった反町委員長はそう説明し、招集するメンバーを、18年の森保監督就任以来、常に大きなグループの中で検討してきたとする。五輪には、FIFA(国際サッカー連盟)の規定である代表招集義務がクラブに生じないため、基本的には協力しないケースも多い。過去6大会でも、最大限の協力をしてきたJリーグに対し、海外組は、アテネの小野、ロンドンで吉田とわずか2人しか招集できなかったのも、このハードルのためだ。

 今回は海外組3人の招集に成功と、従来越えられなかった高いハードルを跳べた背景には、彼らの所属クラブとの綿密なコミュニケーションがあったからだという。3年間、協会と森保監督は「1チーム、2カテゴリー」を掲げて80人以上を選出しており、協会はOA枠の候補選手が在籍するクラブと、自国開催の五輪に出場する意義や、休養期間の契約条文についても長くケアを続けている。

 昨秋には、コロナ禍への対応を含めて、欧州に初めてとなるサッカー協会の常駐事務所を拠点としてドイツ・デュッセルドルフに置き、開催国としての思いを訴えてきた。これも金メダルへの決意の表れだろう。

 16年のリオ五輪でも、ブラジル代表のエース、ネイマールの招集をめぐって、当時所属していたFCバルセロナとブラジルサッカー協会との間で激しいやり取りがあった。しかし最終的にはクラブが了承し、ブラジルも金メダル獲得と、ハッピーエンドに。外国籍の選手を担当する代理人は、「ネイマールの五輪招集は、各国に自国開催の重要性を広めるインパクトにはなった」と指摘する。フランスも24年のパリ五輪開催に向け、協力姿勢を示した。

 海外組のレベルアップに伴うクラブの評価と、関係者の綿密な交渉は、メダル獲得への下地になるはずだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

増島みどりの記事

もっと見る