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映画上映に右翼団体の圧力続発~厚木の映画館が中止、横浜では屈せず上映

中止の説明に残る疑問。表現の自由を守るため、何があったのか解明を

茂木克信 朝日新聞田園都市支局長

「反日武装戦線」の思想や過ちたどるドキュメンタリー

 1974~75年に起きた連続爆弾テロ事件を追ったドキュメンタリー映画『狼をさがして』が、3月下旬から全国で公開されている。そうした中、上映館の一つ「横浜シネマリン」(横浜市中区)が4~5月、右翼団体から上映中止の圧力を受けた。同館は上映をやり抜いたが、そのさなか、神奈川県厚木市内の別の映画館が、この映画の上映を取りやめた。映画館側は、右翼団体の街宣活動で安全が脅かされる恐れがあったと説明するが、わずか1日足らずの間に上映中止を決めるなど、釈然としない点が残る。

拡大三菱重工本社ビル前で、散乱した窓ガラスを踏みしめて負傷者を搬送する東京消防庁の消防職員と救急隊員。同社ビルの1階ロビー付近に仕掛けられた爆弾が爆発し、周囲のビルも含め多数の窓ガラスが割れて通りに降り注いだ。この爆発で同社の社員や通行人ら8人が死亡、380人が重軽傷を負った=1974年8月30日、東京都千代田区丸の内2丁目
 この映画は、東京・丸の内の三菱重工本社などを標的とした爆弾テロ事件を起こした「東アジア反日武装戦線」の思想やその過ちを、元メンバーや家族らの証言をもとにたどった作品だ。一連の事件の中には、昭和天皇を乗せた列車を狙いながら未遂に終わった「虹作戦」も含まれ、映画では日本の戦争責任にも言及がある。

 3月27日、東京・渋谷の「シアター・イメージフォーラム」で封切られ、4月に入ると大分市や名古屋市、京都市、仙台市でも公開された。

拡大映画『狼をさがして』予告編から

横浜シネマリンへの街宣激化。館内に立ち入り中止要求

 横浜シネマリンの代理人弁護士らの説明によると、そこまでは右翼団体による街宣活動は見られなかったが、同劇場での上映初日の4月24日、街宣車2台が同館近くのバス通りで街宣活動をした。

 シネマリンは、青江三奈の「伊勢佐木町ブルース」で知られる港町ヨコハマの粋な繁華街、伊勢佐木町の目抜き通りから1本奥の路地の地下1階にある。昔ながらの喫茶店や理髪店が軒を連ねる一角で、街宣車は大音量で「テロ事件を容認する反日映画だ」「上映料が東アジア反日武装戦線の活動資金源になっている」などと主張したという。

 街宣活動は、昭和天皇の誕生日の4月29日には24日をはるかに上回る台数で行われた。さらに週末の5月8日と15日にも数台で実施された。

拡大横浜シネマリン=2021年5月11日、横浜市中区
 圧力がエスカレートしたのは5月7日だった。同日午後1時過ぎ、右翼団体の男2人が劇場内に立ち入り、チケット売り場にいたスタッフに詰め寄って、責任者との面会や上映中止を要求した。スタッフは「外で話を聞く」となだめて2人を建物から出し、110番通報した。

 しばらくして警察官のほか、この映画の配給会社「太秦(うずまさ)」の小林三四郎代表が駆けつけた。小林代表が午後4時過ぎまで外で対応し、2人は一度引き上げた。だが、20~30分間の電話に続いて午後8時過ぎ、再び建物の外に姿を見せ、午後11時過ぎまで責任者との面会などを要求し続けた。

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筆者

茂木克信

茂木克信(もてぎ・よしのぶ) 朝日新聞田園都市支局長

1973年、福岡県生まれ。97年朝日新聞社入社。盛岡支局(現総局)、豊橋支局、名古屋社会部、東京社会部、仙台総局、石巻支局、秋田総局次長などを経て、2019年5月から現職。同年9月から神奈川県政担当を兼務。個人情報を含む膨大な行政文書が記録された同県庁のハードディスクが、ネットオークションで転売されていたことをつかみ、同年12月6日付朝刊で特報。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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