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新型コロナの生け贄探しはもうやめよう~誰にも不要不急の行動はない!

パチンコ、ランナー、飲食店、路上飲み……。次々と非難の対象を探す精神状況の危うさ

石井好二郎 同志社大学スポーツ健康科学部教授・同志社大学スポーツ医科学研究センター長

なぜ、日本人は生け贄を探すのか?

 なぜ、日本人がこのような思考をするのか? その理由ついて、上述した研究では明らかにしていないが、歴史学者である太田尚樹東海大学名誉教授の言葉は示唆に富む。

 「先祖を農耕民に持つ日本人が目指したのは調和の世界。そこでは一本の小川の水を公平に分け合うのがルールで、自分だけの抜けがけは許せない。これをやってしまうと村八分です」(「日本人と中国人はなぜ水と油なのか(ベストセラーズ)」2011)。

 すなわち、日本人は感染者を調和を乱した者として忌み嫌う傾向が強く、張本人(感染者)となることを恐れる。また、公平のルールを守らない対象を監視し、見つけた際には「自分はこんなに我慢しているのに、何だアイツは!」と他人にも我慢を強いることを求める。そこに感染リスクがあるといった情報が加わると、「感染を広げる悪」に対する正義感が生じ、攻撃が激化する。そこには感染リスクに対する科学的な検証や、「自分は自分、他人は他人」の考えなどなく、共鳴する人がいると、それに乗ずる人々も瞬く間に増えていく。

 筆者の前稿(「論座」2020年7月7日:人々を惑わせた新型コロナ禍でのジョギング なぜ、誤解が広がったのか・警鐘相次ぐ「マスクとスポーツ」)にも記したが、作家の遠藤周作氏(1923-1996)が言うところの、自らのエゴイズムや優越感に気づかず、他者への思いやりや優しさを忘れたまま、自分の正義を振りかざす「善魔」の誕生である。

 善魔が生け贄を求めているのである。

拡大Bakhtiar Zein/shutterstock.com

ウイズコロナの感染リスク対応とは

 筆者の2020年4月4日のフェイスブックにも記しているが、日本人はStay Homeを誤解して認識した。

 2013〜2014年の冬に、筋萎縮性側索硬化症 (ALS) の研究を支援するため氷水を頭からかぶるという「アイス・バケツ・チャレンジ」に著名人が参加、SNSを中心に拡散したのと同じ様に、昨春、多くの著名人(特にアスリートを中心に)による「Stay Home」のメッセージがSNS上に流れた。安倍晋三首相(当時)が実家で優雅にくつろぐ動画をツイッターに掲載し、一日で30万件以上の「いいね」が押される一方、批判も殺到したことを記憶している読者も多いであろう。

 筆者はアメリカの新聞数社をWEB購読しているが、Stay Homeをいち早く呼びかけたアメリカでは、自治体がホームページに「するべきこと」「できること」「してはいけないこと」を掲載していた。筆者は医師ではなく、感染症学やウイルス学の研究者でもない。しかしながら、感染症学やウイルス学の論文を読むことはできるので、感染拡大が始まった頃に、アメリカの自治体の述べた「するべきこと」「できること」「してはいけないこと」の根拠を学術論文から調べ(新型コロナ以前よりコロナウイルスは存在しており、その伝播・感染経路については数多く研究されている)、以下のことが分かった。

 新型コロナであっても伝播・感染経路に変わりはない。新型コロナは飛沫(ひまつ)感染と接触感染により感染し、空気感染の可能性は極めて低い。ただし、気流がわずかな密閉空間で湿度が高い条件では、エアロゾル(非常に小さい粒子)感染の可能性がある(これも筆者の前稿に記した)。

 飛沫(呼吸、会話、咳やくしゃみで放出される粘性のないエアロゾル)の大きさは最大で7〜16μm程度である(図3)。

拡大図3

 この大きさの飛沫は瞬時に乾燥する(図4)。また、大きい唾のような粘性を持った飛沫(粒子)は、会話では1m以内に落下する。大きなくしゃみで100umの飛沫(唾)が出た場合は、蒸発や落下まで15秒弱時間を要するが、口を遮らず正面を向いての吐出を想定しており現実的ではない(図4)。

拡大図4

 以上のことを理解すれば、換気に留意することでエアロゾル感染、ソーシャルディスタンスを保つことで飛沫感染、手洗い・消毒をすることにより接触感染のリスクをそれぞれ著しく低下させることができる。なお、現在、感染が拡大している変異株は、ウイルスのスパイクタンパクが変異し、細胞内に結合しやすくなったものであり、感染対策に変わりはない。

 あれほどStay Homeを唱えた著名人であるが、今は誰もStay Homeを発信していない(筆者が知らないだけかもしれないが)。合計約半年に相当する緊急事態宣言と長期間の自粛生活を経験した日本国民も、Stay Homeだけではウィズコロナの生活が続けられないことを認識しつつあるのではないだろうか?

 冒頭に述べたパチンコ店は、

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筆者

石井好二郎

石井好二郎(いしい・こうじろう) 同志社大学スポーツ健康科学部教授・同志社大学スポーツ医科学研究センター長

1964年3月、大阪生まれ。博士(学術)。広島大学助手、北海道大学講師・助教授・准教授を経て2008年4月より同志社大学スポーツ健康科学部教授。日本肥満学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本臨床運動療法学会などの理事。著書に「もっとなっとく使えるスポーツサイエンス」(講談社)、「からだの発達と加齢の科学」(大修館書店)、「使える筋肉・使えない筋肉 アスリートのための筋力トレーニングバイブル」(ナツメ社)、「サルコペニアがいろん」(ライフサイエンス出版)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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