メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

時の記念日に、時計をメディアとして再考してみる

個人用IT機器と並走してきた進化の歴史

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 6月10日は「時の記念日」だという。ヤマト王権時の671年6月10日(新暦)に時の天智天皇が水時計(漏刻)を用いて日本政府公式の時刻を定めたという故事が由来とのことで、実際には1920年代の〝生活改善〟と銘打った社会教育キャンペーンの中で定められたという。

 当時欧米の先進国から「日本人は時間の感覚に乏しい」とみられていた、という話も古文書にあるようだ。そのキャンペーンの成果なのかはわからないが、日本社会は現在に至るまで、分刻みあるいはサービス分野によっては秒刻みの時間管理が個人レベルでも行われ、世界的にも時間の正確さに対して厳しめと思われる社会となっている。

拡大生活改善運動として行われた時の記念日の啓発キャンペーン。「時限を誤らざるは 規律を保つの始」と書かれている=1929年6月10日、大阪・難波駅前

個人用IT機器の進化と並走してきた時計の歴史

 日本に絞って言えば、時計は家や駅や街頭の置き時計のみならず、懐中時計から腕時計、自動車内の時計、そして携帯電話に表示される時計、とパーソナライズされてきた。GPS情報(人工衛星や再送信アンテナが発するのは、位置情報と時刻!)で時刻補正される時計が一般に出回るようになったのはおそらく2000年前後と考えられる。

 それ以前の時計は基本的に進んだり遅れたりするので、電話の課金サービス「117」や駅の時計(30秒ごとに分針が動く仕組み)など使いながら時々補正する必要があった。時刻の正確さについてはそのGPS補正(電波時計)以前からも、水晶振動(クオーツ時計)、原子振動(原子時計)なども一般商品化していた。しかし電池交換や充電はほとんどの個人用時計にとって今も必要なアクションになっている。

 それらは、実は個人用IT機器とくに通信・放送を含むメディア・コンテンツ・デバイスと並走してきた進化の歴史でもあった。ラジオはおそらく放送開始(1925年)当時から時報を流し、テレビも放送開始(1953年)からおそらくかなり早い段階で、朝の番組を中心に、画面隅に時計を表示していた模様だ。そもそもラジオもテレビも番組自体が秒刻みで編成されているので、番組が変わること自体が時刻の気づきになる側面もある(近年は00分や30分開始でない構成も増えたがこの点は割愛)。

 チューナー内蔵の録音・録画機器も早い段階(おそらく1970年代)から、タイマー機能の必然として正確な時計を内蔵・表示させる商品が一般的になった。ビデオレコーダーはデジタル放送のデータ利用である番組表(EPG)と連動し、それ自体が時刻補正機能にもなっている。

 アナログ波が続くラジオ放送はこの時刻補正機能は録音機器側で持てていないが、実験の域を超えてすでに一般普及を遂げたradiko(ラジコ)等のインターネットラジオ放送によって、前述のテレビ同様の番組表ベースの録音もできるようになった。

 そもそも通信は、サービス事業者の課金管理上、接続時刻が正確に記録されている。インターネットの通信内容にも必然的に秒単位の(通常はサーバー側が管理する)時刻がすべて記録されており、それをPCなどの端末で随時更新できるので、インターネットに接続したIT機器はすべて時計の更新機能が内蔵されていることになる。それはインターネット以前に電話においてもサービス開始(1890年)以来100年以上も従量制課金の根拠となってきたことが、毎月の通話料金明細を見れば明らかである(定額料金の論点は割愛)。

 電話器内蔵の時計の機能としては、携帯電話普及より前、イエデン自体が(黒電話のリースから)家電商品として販売されるようになり、留守番電話機能の必然(カセットテープ録音に自動音声でタイムスタンプを加える)として時計が内蔵され、液晶ディスプレイも内蔵された商品が一般化した1980年代(参考:電電公社民営化が1985年)からと考えられる。

 それらを追って家庭用FAX(これもタイムスタンプが必須)機能付き電話も一般化し、さらに1990年代後半から一般普及していった携帯電話にはデジタル時計のディスプレイ表示がアラーム(目覚まし等)機能とともに標準装備となっていた。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

倉沢鉄也の記事

もっと見る