メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

オリンピック選手だけは〝ガイジン〟もOK?

コロナで足止めを食らっている留学生や研究者たち

栗田路子 ライター、ジャーナリスト

 とうとうオリンピックに参加する外国人選手の入国が始まった。選手や関係者だけは、外国国籍でも特別扱いで日本に入れる。ところがまっとうな「在留資格のある」留学生や研究者は、かれこれ1年以上も入国を拒否されていることは、国内ではほとんど知られていない。それどころか、水際対策の緩さが指摘される度に、変異株をもちこんでいるのはあたかも〝ガイジン〟かのように見なされる。そもそも入国すら許されず、人生を狂わされている世界の若者たちが声をあげている。

拡大ホテルに到着したオーストラリアの女子ソフトボールチーム=2021年6月1日、群馬県太田市

日本入国を拒まれる研究者たち

 「研究の計画が台なしになり、キャリアの計画が狂った!」こう嘆くのはベルギー人の若手社会学者ジャック・ウェルスさんだ。

 ジャックさんは、昨年、日本学術振興会の研究員として一橋大学への派遣が決まった。スイスの大学からもオファーがあったが、念願だった日本行きを実現するため辞退した。日本とベルギー双方の政府が取り決めた正規の交換研究員だから、身分もしっかりしている。ところが、準備が整った途端、足止めを食らった。

 日本は昨年の緊急事態宣言発出以来、突然、水際対策を強化し、「日本国籍保有者」以外の入国を禁止した。昨年10月頃、厳しい条件付きで一部入国を許したものの、今年1月から、再び外国人の新規入国者へは門戸を閉ざし続けている。

 ところが3月になって、〝ガイジン〟でもオリンピック関係者だけはOKとしたから、しびれをきらす留学生や研究者が声をあげ出したのだ。

SNSでつながり、記者会見で窮状をアピール

 宙ぶらりん状態に置かれている人たちは、推定でも数千人いるという。5月26日、彼らの代表が、東京にある日本外国特派員協会でオンライン記者会見を行った。

 代表者の一人、フィリポ・ペドレッチさんは、イタリア人の大学院生で、専門は日本仏教。昨年9月からは中京大学への留学が決まっていたが入国禁止で流れ、来年4月からは早稲田の大学院への留学が決まっているが、このままではどうなるか不安が募り、夜も眠れないと悲壮な表情だ。

 もう一人のジュリア・ルッツォさんは、長年の日本語学習の末に、ようやくイタリア教育省の奨学金を獲得。今年4月から埼玉大学大学院へ待望の留学し、その後イタリアに戻って日本文学の博士課程に進む予定だった。だが、入国が許されないまま1年たって奨学金は失効。現在は、オンラインで受講しながら、自費で賄うしかなくなってしまった留学費を稼ぐために、バイトに奔走する。こんな生活はもう限界にきていると涙声になった。

 二人は、Facebook GroupTwitterを通じて、同じような境遇に置かれている世界の仲間とつながり、市民社会、各国大使館やジャーナリストなどに必死で働きかけている。

拡大FCCJでのオンライン記者会見で、日本政府の鎖国事情を説明するイタリアの大学院生フィリポ・ぺドレッチさん ©FCCJ

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

栗田路子

栗田路子(くりた・みちこ) ライター、ジャーナリスト

上智大学卒。米国およびベルギーにてMBA取得。EU(欧州連合)主要機関が集まるベルギー・ブリュッセルをベースに、欧州の政治・社会事情(環境、医療、教育、福祉など)を中心に発信。共同通信47News、ハフィントンポストの他、 環境ビジネスや国際商業などのビジネス・業界誌に執筆。同人メディアSpeakUp Oversea’s主宰。共著に『コロナ対策 各国リーダーの通信簿』(光文社新書)。