コロナで足止めを食らっている留学生や研究者たち
2021年06月12日
とうとうオリンピックに参加する外国人選手の入国が始まった。選手や関係者だけは、外国国籍でも特別扱いで日本に入れる。ところがまっとうな「在留資格のある」留学生や研究者は、かれこれ1年以上も入国を拒否されていることは、国内ではほとんど知られていない。それどころか、水際対策の緩さが指摘される度に、変異株をもちこんでいるのはあたかも〝ガイジン〟かのように見なされる。そもそも入国すら許されず、人生を狂わされている世界の若者たちが声をあげている。
「研究の計画が台なしになり、キャリアの計画が狂った!」こう嘆くのはベルギー人の若手社会学者ジャック・ウェルスさんだ。
ジャックさんは、昨年、日本学術振興会の研究員として一橋大学への派遣が決まった。スイスの大学からもオファーがあったが、念願だった日本行きを実現するため辞退した。日本とベルギー双方の政府が取り決めた正規の交換研究員だから、身分もしっかりしている。ところが、準備が整った途端、足止めを食らった。
日本は昨年の緊急事態宣言発出以来、突然、水際対策を強化し、「日本国籍保有者」以外の入国を禁止した。昨年10月頃、厳しい条件付きで一部入国を許したものの、今年1月から、再び外国人の新規入国者へは門戸を閉ざし続けている。
ところが3月になって、〝ガイジン〟でもオリンピック関係者だけはOKとしたから、しびれをきらす留学生や研究者が声をあげ出したのだ。
宙ぶらりん状態に置かれている人たちは、推定でも数千人いるという。5月26日、彼らの代表が、東京にある日本外国特派員協会でオンライン記者会見を行った。
代表者の一人、フィリポ・ペドレッチさんは、イタリア人の大学院生で、専門は日本仏教。昨年9月からは中京大学への留学が決まっていたが入国禁止で流れ、来年4月からは早稲田の大学院への留学が決まっているが、このままではどうなるか不安が募り、夜も眠れないと悲壮な表情だ。
もう一人のジュリア・ルッツォさんは、長年の日本語学習の末に、ようやくイタリア教育省の奨学金を獲得。今年4月から埼玉大学大学院へ待望の留学し、その後イタリアに戻って日本文学の博士課程に進む予定だった。だが、入国が許されないまま1年たって奨学金は失効。現在は、オンラインで受講しながら、自費で賄うしかなくなってしまった留学費を稼ぐために、バイトに奔走する。こんな生活はもう限界にきていると涙声になった。
二人は、Facebook GroupやTwitterを通じて、同じような境遇に置かれている世界の仲間とつながり、市民社会、各国大使館やジャーナリストなどに必死で働きかけている。
突然のパンデミックで、どこの国も当初は同じように国境を閉ざした。だが、昨年夏ごろから、欧米諸国を中心に、学問・科学分野の振興を「エッセンシャル(不可欠な)」の定義に含め、駐在員、研究者や留学生などには、ビザを発給し、入国を許し始めた。もちろん、スマホアプリや迅速PCR検査などの厳しい防疫措置を講じながら。
フィリポさんも、ジュリアさんも、「お金がかかっても、誓約書に署名されても、言われたことは何でも守る。ガイジンだからとダメ。ただしオリンピック選手はいいよとはあまりに不公平だ」と嘆く。厳しい措置をとってきたオーストラリアも次第に入国が可能になり、韓国などはむしろ暖かい支援の手を差し伸べ始めているとジュリアさん。二人によれば、今も拒否しているのは、日本と中国
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください