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【3】日本政府は「朝鮮人の重大犯罪」を認めたか

「重大犯罪があったと宣伝せよ」と指示する政府の文書を誤読

加藤直樹 ノンフィクション作家

「風説を徹底的に取調べ、之を事実として出来得る限り肯定」

 本連載の第1回で、ラムザイヤーは基本的な虐殺研究の蓄積をほとんど踏まえていないと指摘した。論文末尾に掲げられている参考文献中、姜徳相や山田昭次などの虐殺に関する研究書が全く挙げられていない(山田の英語論文が一つのみ)ことにそれは表れている。一方で、震災関連の参考資料の半分を『現代史資料6』収録の一次史料が占めている。

拡大「不逞鮮人の暴動は風説か」と題する北海タイムズの記事(1923年9月10日付)。東京地裁の検事正が「さような事実は絶対ない」「(窃盗程度はあっても)流言の様な犯罪は絶対にない」と語っている
 『現代史資料6』は、虐殺関連の重要な史料を収録した重要な書籍だが、大量の史料がほとんど解説もなく詰め込まれており、研究の蓄積についての理解がないと、そもそもページをめくってもそこに何が書かれているのか文脈が理解できない。そのため、ネット上では、この本の中にトンチンカンな「新事実」を見つけるネトウヨがしばしば現れる。ラムザイヤーに起きているのも、そういう事態である。

 まずは、彼が挙げた三つの史料のうち、一つ目の「警備部大正十二年九月十六日協議事項 鮮人問題に関する事項」(『現代史資料6』p82)の原文を見てみよう。最初の行に

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筆者

加藤直樹

加藤直樹(かとう・なおき) ノンフィクション作家

1967年、東京生まれ。出版社勤務を経てフリーランスに。著書に『九月、東京の路上で――1923年関東大震災ジェノサイドの残響』(ころから)、『NOヘイト!――出版の製造者責任を考える』、『さらば、ヘイト本!――嫌韓反中本ブームの裏側』(ともに共著、ころから)、『戦争思想2015』(共著、河出書房新社)、最新刊に『謀叛の児――宮崎滔天の「世界革命」』(河出書房新社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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