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[54]外国人を医療や福祉から排除する日本の公的制度~コロナ禍で困窮に拍車

外国人住民は社会を共に作る欠かせない仲間。尊重される世の中に

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

医療にアクセスできぬ外国人、コロナ禍で危機深刻化

 「大人食堂」の医療相談にも参加してくれたNPO法人「北関東医療相談会」は、関東地方全域で、外国人の医療や生活の支援に取り組む支援団体である。

 6月4日、同会は厚生労働省の記者クラブで記者会見を開き、在留資格がないために医療を受けられない外国人の治療費の寄付を呼びかけた。

 在留資格のない外国人は、生活保護や国民健康保険などの社会保障制度から事実上、排除されているため、コロナ以前から医療へのアクセスが悪いことが問題になっていた。唯一、活用できる施策としては、低所得者などに医療機関が無料または低額で診療を行う無料低額診療事業があるが、同会によるとコロナの影響で医療機関の経営が悪化したことや、貧困が広がり、事業の利用者が急増したことから外国人の診療が断られるケースが目立ってきているという。

 無料低額診療事業が使えない場合、治療費を10割負担で支払わなければならないが、医療機関によっては外国人に対して200%の負担を求めるところも出てきているという。

 また、従来は日本で働くことのできる在留資格を持っている同国人からの支援で生活をしてきた人もいるが、コロナ禍の影響で、失業をする外国人が増え、「共助」も崩壊しつつある。

 そんな中、今年1月には難民申請中のカメルーン人女性、レリンディス・マイさん(42歳)が、適切な医療を受けられなかったため、全身に転移したがんで亡くなってしまう、という事態も起こっている。医療へのアクセスが閉ざされることは命の問題に直結するのだ。

拡大北関東医療相談会が開いた無料の健康診断で検査を受ける仮放免の女性=2020年8月30日、前橋市

「日本人だと助かるかもしれぬ命が、外国人だから奪われる」

 「北関東医療相談会」が開いた記者会見では、卵巣がんのステージ3と診断され、手術や抗がん剤治療に約500万円が必要と言われた40代の女性や、尿管結石と診断され、胆嚢摘出が必要であるが、約200万円の治療費が必要と言われた男性、重度の糖尿病のためICU(集中治療室)で治療を受けていたが、治療の継続が困難になっている仮放免中の男性の3人の事例が紹介された。

 記者会見で報告をおこなった同会スタッフの大澤優真さんによると、40代の女性にはお子さんがいて、お子さんがお母さんの状況を見かねて、がんセンターに「お母さんをどうにかしてほしい」と訴えに行ったが、断られてしまったそうだ。

 「その時のお子さんの気持ちを考えて、いたたまれない気持ちになりました。日本人だと助かるかもしれない命が、外国人だから奪われてしまう。この問題をぜひ自分ごととして捉えてほしいと思います。」と大澤さんは語る。

 記者会見のニュースが報じられ、500万円を超える寄付金が集まったことにより、卵巣がんの女性の治療の目処は立ったそうだ。同会では他の方の治療費の寄付を継続して募集しているので、ぜひ寄付へのご協力をお願いしたい。

※寄付先の口座:ゆうちょ銀行振替口座「アミーゴ・北関東医療相談会」

記号:00150-9-374623(通信欄に必ず「仮放免者への寄付」と記入)

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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