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愛情につけこむ、ペットを狙う犯罪にご用心

コロナ禍で価格高騰、レディー・ガガも被害に

梶原葉月 Pet Lovers Meeting代表、立教大学社会福祉研究所研究員

愛犬家狙って「助けたかったら金を出せ」

 ペットロスのセルフヘルプ・グループを始めた頃、犬を預かったらお金を30万円も要求された、という驚くような話があった。

拡大talitha_it/shutterstock.com
 私たちの運営するセルフヘルプ・グループの活動は、ペットロスの悲しみを傾聴することに重点を置いたサポートなので、基本、「よろず相談」的なアドバイスをする場ではないのだが、20年前の活動の初期には、自助グループというコンセプトが行き渡らなかったこともあり、雑多な相談が寄せられることもあった。

 その頃、人を介して相談されたのは、こんな話だった。

 ペットロスで苦しんでいた50代の女性が、ネットで見つけたのは、障害のある小型犬を一時預かりしてほしいという書き込み。

 悲しくて次のペットを飼うという気持ちにはなれないが、短期間犬と一緒に過ごせる一時預かりなら役に立てるだろうと、女性が善意で連絡を取ると、20代くらいの若い女が犬を連れてきた。

 1カ月後、女性が犬に深い愛着を持った頃を見計らって、若い女は一目で反社会勢力とわかる風貌の男を伴って犬を引き取りに来た。そして、その場で「もう飼えないので保健所に連れていく」というのだ。

 驚いた女性が、「それなら私に飼わせて」と懇願すると、男の方が「犬だってタダじゃねんだよ」と凄み、30万円を要求された。

 50代女性は、もともとこの一時預かりを夫に反対されていたこともあって、家族には相談できず、かといって、すぐにはお金を工面することもできない。家も知られているので、また来たらこの犬を奪われるかもしれないし、心配で眠れない。

 どうしたらいいか、という内容だった。

 もちろん、これは明確な詐欺なので、すぐに警察に行くようにと私たちはアドバイスしたが、その後の話は聞いていない。

 おそらく、これは効率の良い詐欺とは言えないだろう。その後、大流行したという話も聞かないので、犯罪の手口としては淘汰されたのかもしれない。

 しかし、人間の動物を愛する気持ちを利用しようとする犯罪が減ったということではない。インターネット時代を迎え、逆に大きく拡大しているようにも思えるのだ。


筆者

梶原葉月

梶原葉月(かじわら・はづき) Pet Lovers Meeting代表、立教大学社会福祉研究所研究員

1964年東京都生まれ。89年より小説家、ジャーナリスト。99年からペットを亡くした飼い主のための自助グループ「Pet Lovers Meeting」代表。2018年、立教大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。近著『災害とコンパニオンアニマルの社会学:批判的実在論とHuman-Animal Studiesで読み解く東日本大震災』。立教大学社会学部兼任講師、日本獣医生命科学大学非常勤講師。

梶原葉月さんの公式サイト

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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