メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

コロナ・パンデミックのただ中で、介護職員らはいのちによりそっている(上)

35年間、ケアという「しごと」をしてきた私の目に映る仲間たちの姿

白崎朝子 介護福祉士・ライター

病院化した特養、石の礫を浴びても職員は離職せず

 あそか会の病院は3月から医師を中心に感染対策委員会を立ち上げていたため、クラスター発生時には、その感染対策委員会が拡大され、委員長と理事長が中心となり情報を集め対応。4月中旬から発熱者が出始めたため、併設されたデイサービスも停止した。

 PCR検査の結果から、クラスターだと確認され、ただちに感染者と非感染者が利用するエリアを分けるゾーニングを開始。だが感染者対応をしていた医師の進言で、症状がない陽性者はホームにとどめおくことになった。「特養の病院化」という苦渋の選択で、介護職員への負担は増大した。

 クラスターの渦中、事務所にホワイトボードを置いて、数分で状況が変化していく事態に対応した。まるで災害時のような緊迫した情景だった。さらにマスコミや行政からの問い合わせ、誹謗中傷の電話が殺到。混乱は加速し、管理職も職員も疲弊した。

 だが世間から石の礫を浴びても、クラスターで離職した職員はいなかった。検査の実施が早く、自宅待機などの決定も迅速。施設職員と病院職員が可能な限りクラスターを支援した。

法人負担でPCR検査、理事長のリーダーシップ

 そして、なによりも職員の気持ちを支えたのは、関西から日帰りで見舞いにきてくれた古城資久理事長の存在だった。

クラスターで苦しむ職員たちの心の支柱だった、あそか会の古城資久理事長。拡大クラスターで苦しむ職員たちの心の支柱だった、あそか会の古城資久理事長。
 古城理事長は自腹を覚悟でPCR検査を決断し、ショートステイ利用者の家族にまで法人負担で400件の検査をした。膨大な経費を危ぶむ声に、「人のいのちを救うのに、そろばん弾いてる場合じゃないだろう!」と理事長は言った。その発言を和田敬子施設長から聴いた私は、真のリーダーシップだと思った。

 当時、68歳だった和田施設長は1日2時間の仮眠のみで10日間、利用者のオムツ交換、クレーム・マスコミ・行政の対応をした。

 認知症の入居者が原発作業員のような防護服の職員をみて、ただならぬ事態と感じとり、自発的に軽作業を手伝ったというエピソードを、泣きながらがんばったという女性職員から聴いた。また「他の施設でクラスターが出たら応援に行きます!」と言った20代の男性職員もいて、彼はのちに有言実行した。

 稀有な経験をした職員たちに出逢えたことは、コロナ禍のなかでの、最高の宝だった。現在も北砂ホームの職員との交流はあり、和田施設長とは昨年秋に、「おばちゃんの会」を結成した。

愛する沖縄の苦境

「感染防護物資は病院優先」、特養には医療用マスクもなく

 私にとって沖縄は魂の故郷だ。私が死んだら遺骨は沖縄の海に散骨してもらうよう息子に頼んでいる。そんな沖縄の苦境を知ったのは昨年8月7日。特養Bのクラスターを報じる沖縄タイムスのWeb記事を見た私は、すぐさま友人たちに応援を呼びかけ、北砂ホームの施設長に喜ばれた経口補水液とカンパ、手紙を送った。

 特養Bの運営法人に必要な物資を聞きたくて電話したが、「わからないから現場に聞いて連絡します」との返事だった。法人本部が現場を把握していないということは、現場を支援していないことを意味した。翌日も同じ対応で3日目にやっと、「詳しいことは分からないので直接、電話してください」と言われた。

 大変な現場に電話してもいいのかと躊躇したが、クラスターの出た特養に電話して、「東京でクラスターが出た介護現場を応援しているゆるやかなネットワークのものです。なにか必要なものはありませんか?」と言うと、対応してくれた事務職員から、「いま一番必要なのはN95マスクです」と言われ絶句した。クラスターが出てから10日以上たっていた。もともとは特養Bと同法人の病院でクラスターが発生し、その病院に入院していた利用者が感染し、特養Bに戻って感染が拡大したという。

 「感染防護物資は病院が優先され、ほとんど回ってきません」と聞き、介護職員が置かれている凄惨な状況に凍りついた。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

白崎朝子

白崎朝子(しらさき・あさこ) 介護福祉士・ライター

1962年生まれ。介護福祉士・ライター。 ケアワークやヘルパー初任者研修の講師に従事しながら、反原発運動・女性労働・ホームレス「支援」、旧優生保護法強制不妊手術裁判支援や執筆活動に取り組む。 著書に『介護労働を生きる』、編著書に『ベーシックインカムとジェンター』『passion―ケアという「しごと」』。 2009年、平和・ジャーナリスト基金の荒井なみ子賞受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

白崎朝子の記事

もっと見る