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コロナ・パンデミックのただ中で、介護職員らはいのちによりそっている(上)

35年間、ケアという「しごと」をしてきた私の目に映る仲間たちの姿

白崎朝子 介護福祉士・ライター

「N95マスクがありません!」~叫んで集めた支援物資

 「沖縄の特養のクラスター現場にN95マスクがありません!」とメーリングリストや友人たちに一斉メールで叫びまくった。5分もたたず医師の友人から、「すぐに5個送ります!」と返信がきた。「医師の友人が5個送ると言っていますが……」と電話すると、「5個でもありがたいです!」と言われた。

 現在は安価で購入できるようになったが、当時のamazonの通販サイトでは、N95マスクは医師ですら購入ができず、病院でないと買えないシステムだった。友人は勤務医で、特養Bに連絡しても、「嘱託医で、正規職員ではないので手配できない」と言われた。だが一箱20個13200円で個人購入できる楽天市場の情報を得た。その情報をくれた奈良の友人からのカンパがあったので、すぐにN95マスクを注文した。また沖縄の基地反対運動に関わるMさんが緊急カンパ要請を拡散してくれた。奈良の友人が勤務する福祉作業所では、知的障害者と職員がゴミ袋で簡易防護服をつくっており、送ってもらった。

 特養Bの感染者は8月30日時点で、入居者7人、職員6人とほぼ同数。北砂ホームの感染者51人のうち、職員は7人。特養Bの職員の感染率がいかに高いかがわかる。特養Bに送ったN95マスクはお盆が重なり、到着に2週間もかかった。当時の沖縄は輸送状況が著しく悪かった。その一件から、クラスターが発生する前に備蓄しておかないと初動対応ができないことを学んだ。沖縄の離島だけでなく都会においても、法人や行政の支援がない介護事業所には同じことが言えた。

都会にも離島にも……各地に支援物資を送る

 また以前、ボランティアさせていただいた個人経営の入所施設が気になり連絡すると、「濃厚接触者の職員が出ました(後に陰性だと判明)。」と聞き、「心配で生きた心地がしないです。御守りだと思って受け取って!」と、遠慮する施設長に言って、N95マスクを送った。そこは個人経営の小規模施設のため、公的支援が受けにくいと判断した。だが、それ以上に私の訪問を喜んでくれた入居者や職員の顔がよみがえり、いてもたってもいられなかったからだった。

奈良の知的障害者の福祉作業の利用者が、北砂ホームに送った激励の色紙。拡大奈良の知的障害者の福祉作業の利用者が、北砂ホームに送った激励の色紙。
 更に沖縄の貧困層を支える法人Cに連絡すると、医療用手袋が不足し高騰しているからと手袋をリクエストされ、1200枚送った。2日後、法人Cの運営する病院で院内感染が出て経営が苦しいことを沖縄タイムスの記事で知った。貧困層を支援している法人Cで院内感染が起きれば経営が逼迫し、貧困層の医療に直撃する。私はすぐさま、手袋1000枚を追加で送った。

 この頃、全国の私の友人たちが働く介護事業所で、感染防護物資の備蓄がある所は2ヵ所のみ。東京でホームレス支援をしている「ほしのいえ」がゴミ袋で簡易防護服をつくっていた。防護服は、私がN95マスクを送った介護現場に送って頂いた。

 愛してやまない波照間島の診療所にも連絡したが、「大丈夫ですよ~」と明るく言われたので、とりあえず送らなかった。伊江島、石垣島、宮古島、慶良間諸島の座間味島と阿嘉島の介護現場にN95マスクを送った。宮古島と座間味島以外は、かつて私が、その海の美しさに魂が癒された島だった。

誹謗と、協力と

陽性の職員が陽性の利用者を介助

 9月17日、奈良の友人が送ってくれた中国新聞に書かれた知的障害者入所施設Eのクラスターに関する記事を読んだ。4月13日にコロナの陽性者が判明。陽性の職員までもが自宅に帰らず陽性の利用者を介助したとあった。ここでも誹謗中傷の電話が鳴りやまなかったという。

ある障害者支援施設のガーデンは、入居者や地域のひとたちの憩いの場。目を凝らすとメダカがたくさん泳いでいた。拡大ある障害者支援施設のガーデンは、入居者や地域のひとたちの憩いの場。目を凝らすとメダカがたくさん泳いでいた。
 ネット検索すると施設Eのホームページ(以後、HP)は閉鎖されていて、役所のHPで電話番号が分かった。すぐに電話し、サービス管理責任者(以後、サビ管)の男性に、「私の息子も知的障害者施設のサビ管です。今更ですが、なにか必要なものはありませんか?」と聞いた。「では、お言葉に甘えて。利用者さんはお口に入るものがいいですね」と言われた。

 利用者と職員で100人分のお菓子を発注した。女性職員に、「月曜にお菓子が届くので、利用者さんと職員さんとで召し上がってください」と電話で伝えると、「お菓子……」と私が言った途端、女性のエネルギーが一気に変わり、笑顔が目に飛び込んでくるような感覚があった。「私の息子も知的の施設で働くサビ管なんです」と言うと、「そうなんですか? うわ~ありがとうございます!」と、とても明るく返してくれた。

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筆者

白崎朝子

白崎朝子(しらさき・あさこ) 介護福祉士・ライター

1962年生まれ。介護福祉士・ライター。 ケアワークやヘルパー初任者研修の講師に従事しながら、反原発運動・女性労働・ホームレス「支援」、旧優生保護法強制不妊手術裁判支援や執筆活動に取り組む。 著書に『介護労働を生きる』、編著書に『ベーシックインカムとジェンター』『passion―ケアという「しごと」』。 2009年、平和・ジャーナリスト基金の荒井なみ子賞受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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