メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

北海道新聞が速やかに果たすべき説明責任とは――「記者逮捕」を考える〈上〉

メディア界への影響は甚大 新人記者はなぜ現場に向かわされたのか

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

拡大北海道新聞社・札幌本社=札幌市中央区

新人記者は指示を受け建物内へ 「行きたくない」と言ったとの話も

 筆者は2011年まで25年間、北海道新聞社に記者として勤務していた。その間、報道本部(現・報道センター)次長として、全社の警察・司法取材を見渡すポジションにいたこともある。古巣とあって、今も種々の情報は耳に届く。

 逮捕された記者は今年4月に入社したばかりである。20日間の研修を終え、赴任先の旭川に向かったのは4月20日すぎ。道外出身だから土地勘もないだろう。街のどこに何があるかを覚え、身の回りの生活を整えることで精一杯だったと思われる。記者としての仕事もスタートしたばかり。ようやくメモのとり方を覚え、短い原稿に慣れてきた頃だ。

 新聞横断検索のG-Searchで調べてみたら、当該記者の署名記事は逮捕前までに約50本。旭川のフラワーロードで苗定植のイベントがあった、美瑛地区で甘いアスパラの収穫が始まった、トマトの栽培実習に障害者が参加した、アマビエちょうちんが飲食街に登場した……。そんな地域の話題をほぼ1日1本のペースで書いていたようだ。

 どの原稿も決して長くはないが、悪戦苦闘の連続だったと思う。筆者も入社当初は、幼稚園での防火行事を伝える20行ほどの原稿執筆に3時間も費やした記憶がある。

 そんな経験しか持たない会社員記者が誰の指示も受けず、単独で入構禁止の大学内に入り、扉の隙間から会議の様子を録音するとは思えない。実際、筆者が複数の関係者から得た情報によると、学長選考会の取材チームに組み入れられたこの記者は学内に入って会議の様子を探るように言われ、看護学科棟に向かったという。

 4月入社の社員にとっては、6月と言えば、まだ試用期間中である。指示にものを言える状況ではないだろう。行けと言われた本人は、行きたくないと言っていたとの話もある。

道新コメント「逮捕は遺憾」

 事件後、北海道新聞社は記者逮捕を伝える第一報において、佐藤正基編集局総務のコメントを載せている。

「本紙の記者が逮捕されたことは遺憾です。記者は旭川医科大の吉田学長解任問題について取材中でした。逮捕された経緯などについて確認し、読者のみなさまにあらためて説明させていただきます」

 また記者が釈放されたことを伝える記事でも後に説明するという趣旨の短いコメントを載せた。本稿執筆時点では、読者に対する説明はこれしかない。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

高田昌幸の記事

もっと見る