メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

北海道新聞が速やかに果たすべき説明責任とは――「記者逮捕」を考える〈上〉

メディア界への影響は甚大 新人記者はなぜ現場に向かわされたのか

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

道新だけが記者の実名を報道 判断はどう行われたか

 各メディアは、明文化の程度こそ違え、犯罪報道の掲載基準を持っている。北海道新聞社はそれを『編集手帳』と呼ぶ。数年置きに改訂され、過去には筆者も事件事故報道の項目について取りまとめに当たった。

 各社と同様、北海道新聞も「犯罪報道は実名主義」である。しかし、何ごとにも例外はある。少年事件や微罪事件などの場合、内容をよく取材した上で掲載・不掲載、容疑者の実名・匿名を判断していく。

 今回の事件は、全国紙やテレビ局も含め、主要メディアのほぼ全てで報道されたが、記者の実名を報じたのは北海道新聞だけだった。実名掲載の判断はどのように行われたのだろうか。佐藤編集局総務は6月24日、社内に向けておおむね次のように説明したという。

 「『編集手帳』にある通り、事件事故の報道は実名が原則だ。建造物侵入そのものは重い罪ではないが、過去の記事でも公務員などが容疑者の場合は実名で報道してきた。微罪事件であっても実名が原則だ。『自社の社員だから』『若い社員だから』と言ってダブルスタンダードにはしなかった。編集局幹部でさまざまな観点から議論し、最終的には編集局長が判断した」

現地の「匿名で」を抑え、「公務員らは実名だった」と本社

 筆者が得た情報によると、現地の旭川支社報道部は支社長を先頭にして、実名掲載に強硬に反対した。それを押し切る形で本社は実名報道を決断したという。常務取締役編集局長の小林亨氏は6月21日にその任に就いたばかり。実名か匿名かの鳩首協議には、警察取材の長い玉木健・編集局次長兼報道センター長らが当然に加わったはずである。

 協議では、どんな論点が議論になったのか。その説明は対外的には行われていない。編集局の現場記者らに対しても「過去、公務員などの犯罪は実名だったからそれに則った」「ダブルスタンダードはよくない」といった点しか説明されていないようだ。

 しかし、「過去は実名だった」は本当だろうか。事件の様相は一つ一つ違うため、単純比較はできない。それでも参考になりそうな事例はある。北海道新聞の記事からいくつか拾ってみよう。

拡大旭川医大の学長選考会議終了後、報道陣の取材に応じる選考会議の西川祐司議長。この日、選考会議開催中の建物内で北海道新聞記者が現行犯逮捕された=2021年6月22日午後6時6分、北海道旭川市の旭川医科大学

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

高田昌幸の記事

もっと見る