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東京五輪スポンサー朝日新聞社の不都合な真実

大切なのは「編集権の独立」よりも「取材源からの独立性」だ

小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

 『五輪観客、開会式は2万人検討 スポンサーらの削減困難』。東京五輪開幕まで約1カ月に迫った6月20日、朝日新聞の五輪担当記者が執筆した、こんな見出しの記事が掲載された。内容はというと、新国立競技場の五輪開会式の観客数を大会組織委員会などが2万人を上限とする案を検討しているというのだ。
 理由はスポンサー招待客らを大幅に減らすのが難しいためだという。つまり一般席を減らす一方、スポンサー席を確保する案だ。このスポンサー席に大会組織委という公権力を監視すべき新聞社枠が含まれるとしたら、話は穏やかではない。

東京五輪はスポンサーとオリンピック貴族のための大会

 開会式の観客数は以前、一般席9300人、スポンサーなど大会関係者席1万500人、国際オリンピック委員会(IOC)や国会議員など貴賓席7300人の計2万7100席とされていた。この内訳を見るとスポンサー枠が最も多く、一般席の割合は35%にも満たない。

 東京五輪の開催費用は大会組織委予算だけで1兆6440億円、関連費用を合わせると3兆円を超える。このうち、IOCの負担分はたったの1410億円、割合にして大会組織委予算分の8.5%だけだ。また、マラソンと競歩の札幌への移転開催費用でもIOCの負担分はたった5分の1だった。

 この数字からも巨額の国民の血税をつぎ込むオリンピックは、スポンサーとオリンピック貴族のための大会だと分かる。

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 朝日新聞社、読売新聞社、毎日新聞社、日本経済新聞社、産経新聞社、北海道新聞社の大手新聞6社が2016年、大会組織委とスポンサー契約を結んだ。当時、筆者が所属する米五輪専門メディアAround The Rings(ATR)は大会組織委がホームページ上で開示したスポンサー契約内容を調査した。それによると契約内容は以下だった。

 ・呼称の使用権
 ・マーク類の使用権
 ・商品/サービスのサプライ権
 ・大会関連グッズ等のプレミアム利用権
 ・大会会場におけるプロモーション
 ・関連素材の使用権

 ただし、これらはあくまでスポンサーが行使できる内容のみで、すべてでは無い。過去の五輪大会ではチケットやホテルのスポンサー枠があった。ここで読者のみなさんには、2018年平昌冬季五輪当時を思い出してもらおう。

 この開会式のチケットは事前にほぼ完売したと報じられていた。だが、ふたを開けてみると観客席はガラガラ。実はこの空席、オリンピック貴族とスポンサーに割り当てられた席だった。あまりの寒さにスポンサーやその顧客が競技場での観戦をためらった。五輪のスポンサー契約には実際、宿泊施設の優先割り当てと、五輪チケットの割り当てがある。

 今回の東京五輪でもこれらが含まれる可能性は非常に高い。これについて大会組織委の戦略広報課は2016年当時、ATRの取材に対して「詳細な契約内容については、契約上の守秘義務により開示しかねます。ご了承ください」と回答した。

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筆者

小田光康

小田光康(おだ・みつやす) 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

1964年、東京生まれ。明治大学情報コミュニケーション学部准教授。米ジョージア州立大学経営大学院修士課程修了、東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門はジャーナリズム教育論・メディア経営論・大学経営政策論。現在、タイ北部山岳少数民族に向けた感染症予防メディア教育開発、及び貧困農村経済開発対策のプロジェクトに携わる。米Deloitte & Touche、米Bloomberg News、ライブドアPJニュースなどを経て現職。米五輪専門メディアATR日本代表、東京農工大学国際家畜感染症センター参与研究員などを兼任。日本国内の会計不正事件の英文連載記事”Tainted Ledgers”で米New York州公認会計士協会賞とSilurian協会賞を受賞。著書に『スポーツ・ジャーナリストの仕事』(出版文化社)、『パブリック・ジャーナリスト宣言。』(朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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