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熱海土石流はなぜ発生したのか?~伊豆山のドローン動画を地質学者・塩坂邦雄氏が読み解く

「黒い盛り土」はどうして崩壊したのか。メガーソーラーは関係しているのか……

竹内敬二 元朝日新聞編集委員 エネルギー戦略研究所シニアフェロー

◆「7月4日 熱海土石流最上流映像」撮影・楊珂さん 解説・塩坂邦雄さん

 静岡県熱海市伊豆山で7月3日に発生した土石流は、谷間を埋め立てていた「黒い盛り土」の大崩壊で発生した。雨が降っていたとはいえ、開発行為に起因する盛り土が招いた今回の悲劇は、災害というよりも人災の要素が強い。盛り土が崩壊した原因は何なのか。土石流発生の直後に谷間をドローンで調査した地質学者の塩坂邦雄氏(土木学会の特別上級技術者)が読み解く。

 塩坂さんらのグループは、土石流発生翌日の7月4日、熱海市伊豆山にある土石流が始まった地点に行き、そこから周辺をドローンで撮影した。動画から分かる現場の状況は次のようなものだ。(冒頭の動画「7月4日 熱海土石流最上流映像」を参照してください)

拡大今回の熱海土石流の最上流部=熱海市伊豆山(楊珂さん撮影のドローンによる動画から)

「黒い盛り土」は産業廃棄物?

 動画の中で、塩坂さんは次のように説明している。

拡大塩坂邦雄さん(塩坂さん提供)
 土石流の起点は逢初川(あいぞめがわ)支流の最上流部で、標高400メートルの地点。盛り土として谷間を埋めることに使われていた土砂が崩壊したため、深さ約20メートルのえぐれたような谷地形になっている。盛り土の上には谷を渡るように道路があったが、崩れて寸断されている。

 盛り土の2カ所が「円弧滑り」を起こしていると分かる。東側(メガソーラーと反対側)の円弧滑りの方が巨大だ。崩落した土砂について、静岡県は約5万立方メートルと推定している。土石流は下流に行くにしたがってさらに土砂などを巻き込み、約10万立方メートルの土石流になり、急傾斜の谷合いを下って2キロ先の海まで流れ落ちた。

 土砂がごっそり抜けたあとには、もともとあった谷地形が現れている。その底部や、両側の壁には、さまざまな色の土が見える。塩坂さんは「赤く見える土はもともとあった基盤で、箱根の火山の噴出物。黄色い(白っぽい)土は普通の盛り土、そして黒い土も盛り土だが、色から考えて廃棄物が入っていると思われる」とみる。塩坂さんらは住民から「3、4年前から多くのトラックが廃棄物を搬入していた」という話を聞いている。熱海市も業者に廃棄物撤去を要請したことがある。

 少し下流に下ると谷底が二段になっている。少なくとも2回土石流が流れて削ったと考えられる。

拡大伊豆山山頂付近のソーラー施設=2021年7月6日、静岡県熱海市、朝日新聞社ヘリから
 この近くには、尾根筋を掘削し平らにした長細い土地に長細い土地にメガソーラーがある。メガーソーラーが今回の土石流に関係したのではないかという意見もあるが、塩坂さんは画像から、「このメガソーラーが直接的に災害に関係していることはない」とみる。

 「このメガソーラーは尾根部を削った場所に建設されている。盛り土と異なり、地盤は非常に安定しており、両側の森も崩壊せず、健全な状態だ。ただ、メガソーラーの場所に降った雨水がどう流れているかなどは大きな問題だ。メガソーラーから流れ出る雨水が道路(進入路)を通って盛り土にも流れている。今後調べる必要がある」と話す。

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筆者

竹内敬二

竹内敬二(たけうち・けいじ) 元朝日新聞編集委員 エネルギー戦略研究所シニアフェロー

エネルギー戦略研究所(株)シニアフェロー。元朝日新聞編集委員。科学部記者、ロンドン特派員、論説委員などを務め、環境・原子力・自然エネルギー政策、電力制度などを担当してきた。温暖化の国際交渉、チェルノブイリ原発事故、3・11などを継続的に取材。著書は、電力業界が日本社会を支配するような社会産業構造がなぜ生まれたのか、なぜ福島事故がおきたのかを描いた『電力の社会史 何が東京電力を生んだのか』(朝日選書、2013年)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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