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「孤立」が子どもや若者を苦しめる。だから私たちは「居場所」をつくる(上)

コロナの時代、貧困と格差が拡大する中で

青砥 恭 NPO法人 さいたまユースサポートネット代表

 コロナ禍のもと、実質的に失業状態にある非正規雇用者が女性103万人、男性43万人に達している(2021年2月、野村総研)。北海道内の貧困対策の学習支援団体の調査では、利用する子どもの親の約2割が仕事が減るか、なくなったという。低所得家庭では生活費が減り、給食もなくなり、子どもにどう食事を与えるかという親たちの不安が高まっている。2020年の小中高校生の自殺者数は過去最多となる479人だった(文部科学省)。

 大学は対面での授業がなくなり、入学以来、友だちが一人もできないと訴える大学生は多い。昨年春に入学して以来、実習以外は大学に行くこともなく過ごした、私たちと共に活動する学生ボランティアもいる。

 オンライン上で知人の顔を見つけると、最初に出てくる言葉は「会いたいね!」である。身体性抜きのSNS上の関係だけでは人は満足できないのである。子どもはなおさらだ。

2020年2月、首相の休校要請で起きたこと

 私が代表をしているNPO法人さいたまユースサポートネット(以下、さいたまユース)は、ひとり親世帯の中高生などを対象にする学習支援事業を自治体から受託している。

さいたまユースのたまり場。自由で、まったりしたたまり場の過ごし方=筆者提供拡大さいたまユースのたまり場。自由で、まったりしたたまり場の過ごし方=筆者提供

 2020年度の4、5月は、新型コロナの感染拡大で学習支援教室も開催できない状態が続いた。その間、若いスタッフたちは生徒と保護者に対し、教室での活動内容を郵便で紹介したり、送付した教材や問題の解答を添削したり、生活の状況や困っていること、これからの学校生活への不安感などを電話で聞き取ったりするとりくみを続けた。

 学校が休校の間は、ほとんどの生徒は自宅で過ごしていたが、保護者の中には精神疾患を持ち、食事や学習など子どもの生活に関われない家庭もあり、昼夜逆転になっていたり、学校の課題を全く取り組めていなかったりする生徒も多かった。学校での給食がなく、この3か月間で体重がへったという子どもたちも少なくなかった。

 ほぼ半数の生徒や親からは、Wi-Fiやタブレット、パソコンがなく、学校から連絡があった「オンライン授業」への不安の声も出ていた。私たちの学習支援の対象である貧困世帯では、半数を超える生徒たちが電話と手紙しか、連絡方法がないのである。「親の経済力は子どもの学力と健康に大きな影響がある」ことはここからも見えた。

 2020年2月27日の「休校要請」で、ほぼ全国的に休校になった3月2日から登校が再開された6月7日まで3か月の間、子どもたちは学校という「学習」「友だちづくり」「運動」のためのかけがえのない居場所を失った。

 ある小学校低学年の子どもを持つ親は、自分は生活のために働かざるを得ず、1日中、子どもを家の中に置いたままにすることへの不安を訴えていた。子どもも3か月間ひとりで家の中にいたのである。親も子もストレスを増大させながら過ごしてきたことになる。

 DVや虐待も報告されている。小中学校の子どもたちは全国で約1千万人である。文科省の2月28日の通達では障がいを持った子どもは、登校させてもやむをえない、という措置をとった。障がいを持つ子どもたちだけでなく、すべての子どもと親たちにとって学校を閉じることで発生した孤立によるストレスが何をもたらしたのか、これから検証が行われなくてはならない。

 この子どもたちが「コロナ世代」などとされ、深刻なトラウマが将来、表面化しないことを祈るしかない。

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筆者

青砥 恭

青砥 恭(あおと・やすし) NPO法人 さいたまユースサポートネット代表

島根県松江市生まれ。1983年から埼玉県で県立高校の教諭。その後、埼玉大学や明治大学で教育学を教えた。2011年7月に特定非営利活動法人さいたまユースサポートネットを設立。その後、さいたま市で学習支援、居場所づくり、就労支援など若者たちの包括的支援のネットワークと地域拠点をつくる活動をしている。2016年からは、「全国子どもの貧困・教育支援団体協議会」の代表理事も務める。著書に『日の丸・君が代と子どもたち』(岩波書店)、『ドキュメント高校中退』(筑摩書店)、『若者の貧困・居場所・セカンドチャンス』(編著 太郎次郎社エディタス)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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