生きる意欲を探す場所、「たまり場」と「ルーム」
2021年07月13日
「孤立」が子どもや若者を苦しめる。だから私たちは「居場所」をつくる(上)
では、このような課題を抱えた若者たちに、日本社会はどのように対応しているのか。
生活保護費を受給している家族はいるが、若者たち自身の現在の困難を解決する制度ではない。日本社会で、最低限の生活水準を維持するための収入以下の世帯とされる「相対的貧困」下で生活する17歳以下の子どもは約280万人(相対的貧困率13.5%)とされるが、同年代の生活保護世帯の子どもの数は25万人である。10分の1に満たない。
2013年につくられ、2019年に一部改正された「子どもの貧困対策推進法」も将来の「貧困の連鎖の解消」を課題としていて、「今の貧困からの離脱」を目的としたものではない。そんな若者たちが今の孤立から解放され、社会につながる場として開設されたのが、「たまり場」と「ルーム」という若者たちの居場所なのである。
私たちが2011年に「たまり場」を作ったのは、(1)学校や社会の「階層格差によって作られたトラック」で競争に耐えられなくなった子どもたちが一時的にでも避難や休息ができ、他者からの視線に耐える力を育てること、(2)異なる価値観をもつ人が集う場で人間の連帯を体験し、社会で協働の機会を得る「場」を創設することが、多様な価値観が交錯する社会で生きていく上で必要だと考えたからである。
(3)居場所に多様な若者たちが集まり、交流することで受容し合える力を若者たちに育てなければならないとも考えた。さらに、(4)外国人の若者が日本の同世代の若者と最初に交流できる場にもなっていた。様々な目的で日本にやってきて、不安の中で暮らす外国人の若者たちが日本語の習得や仲間づくりに利用できる場になっていた。
2013年にはさいたま市による公設の居場所、「さいたま市若者自立支援ルーム」(以下大宮ルームという)が大宮駅近くに開設され、私たちの団体が運営を受託している。月曜日から金曜日まで開かれ、多くのプログラムや地域住民とのイベントなども行われている。
2020年にはさいたま市の2番目のルームが南浦和駅近くにできた(南浦和ルーム)。大宮ルームには年間、7千~8千人の若者たちが利用していた。昨年春からはコロナ禍でフルオープンとはいかず、人数を絞って開いているが、それでも最近は連日、2つのルームとも20名を超える若者たちが午前、午後とも利用している。
「一人の子どもや若者も取り残さない社会を」
さいたまユースサポートネットは、子ども・若者たちの居場所づくりを進めています。是非ご支援をお願いいたします。
さいたまユースがボランティア活動として運営する「たまり場」は利用者も小学生から30代後半にまで幅が広がり、毎週30~50人ほどの若者たちによる「たまり場コミュニティー」となって定着している。
「たまり場」のボランティアが学生中心であることはスタート時から変わらないが、70代の男性ボランティアのTさんが孫のような小学生と鬼ごっこをしたり、50代後半の大企業社員のMさんが若者と本気で将棋を指したり、60代後半のNさんが中学生や高校生たちと一緒に勉強したりと、ボランティアも利用者も人との交流を楽しむ場になっていることが実感できる。
ルームもたまり場も開設当初から、①利用者と支援者という垣根を作らないこと、②無料で利用できること、③イベントやプログラムは利用者の意見を取り入れて行うこと、④日々の活動でも、司会は利用者とスタッフが一緒に行うなど、利用者やスタッフの主体性を尊重する仕組みになっている。
ルームでは、⑤多くのプログラムやイベントが地域自治会との協同で行われている。地域の自治会に加入し、地域の清掃からお祭り、スポーツ大会まで参加し、ルームが開催するイベントにも地域住民が参加している。
さいたまユースが運営する居場所は、学校や家族の中で孤立し、仕事や学校で躓いた若者たちが利用している。中には精神疾患や障がいで悩んでいる若者も少なくない。
「学校は勉強ができるか、運動がうまい人のためにある」と話した「ルーム」に通う若者がいたが、この言葉を否定する説得力のある言葉を私たちはもっていない。
また「ぼくはみんなと違う。同じようには生きられない……」。この言葉も今の若者を象徴する言葉だ。多くの学校も職場も「みんな同じ
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