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「100日後に死ぬワニ」はなぜターゲットにされるのか

「あくまでもネットのネタだから」と気軽に嘲笑し叩いた結果は

赤木智弘 フリーライター

 新宿の映画館「バルト9」が、オンライン予約システムに関する注意をホームページに掲載していた(現在は削除)。

 どうやら予約システムを悪用して鑑賞意思のない予約を繰り返すイタズラをしている人がいるらしく、著しい損害が生じる場合は警察への届け出を行うという非常に強い文面となっていた(2021年7月9日付け「弁護士ドットコムニュース」)。

 で、どうやら文面を出す原因となったと考えられるのが、7月8日から劇場公開された映画『100日間生きたワニ』に対するイタズラである。

映画館が強い態度を示すのも当然

拡大映画『100日間生きたワニ』の公式サイトから
https://100wani-movie.com/

 イタズラの内容は、ネットで少し話題になっていた。架空の予約をすることで画面表示上の座席の色を予約済みの色に変え、それを並べて「100ワニ」や「エロ」といった文字や記号をつくるというものだ。

 バルト9の予約システムでは、クレジットカードなどでの先払いはもちろんだが、先に席を予約しておいて、お金は映画館に行って上映の30分前までに払うという支払い方もできる。イタズラをした人はこれを利用して、架空の席確保を繰り返していたようである。

 今回のイタズラを行った人間が、どれだけの時間席を占拠したのかは分からないが、最長で支払期限である開演30分前まで。短くとも予約しては新しい予約を繰り返すのだから、文字を作るだけでもそれなりの時間がかかっているはずである。

 その間、席は仮押さえされてしまい、映画を見たい人が席を購入できなくなってしまうのである。

 そしてさらに重要なのが、たとえ自分が座りたい席が抑えられていなかったとしても、こうした明らかにイタズラが発生している状況で、その人たちと一緒の空間で映画を見たいと思うだろうか?

 映画というのは、近くの人が匂いの強いものを持ち込んで食べていたり、友達同士で映画のあらすじをしゃべっていたり、上映中にスマホを光らせたり消したりしていたりしているようなマナーの悪い人がひとりでもいれば、それだけで台無しになってしまうメディアである。

 もし仮に映画館のシートで文字を書くような人たちが実際に映画を見に来たとして、ぼくだったらその人たちと同じ空間で映画を見たくない。そうしたことをオモシロ半分で行うような人に、常識的なマナーを期待することはできないのだから。

 こうして、映画館は普通に映画を見に来ようとした客までもを逃してしまう可能性がある。映画館がこうしたイタズラに対して強い文書を出すのは当然のことである。


筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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