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若者・女性を消費する報道や選挙はなぜ問題なのか~沖縄の事例から考える

組織の後ろ盾や社会的地位のない若者・女性を利用することで失われるもの

山本章子 琉球大学准教授

 ここ数年、「慰霊の日」が近づくと頭を悩ませることがある。大学で教えているゼミの学生と、フィールドワークの一環で平和祈念公園に行くのだが、ある問題に毎回苦慮するのだ。

 それは一言でいうと、メディア・SNS対応だ。

 あらかじめ断っておくと、通常の取材に対しては私も学生もいつも快く協力している。問題は、許可をとらずにイベントの当事者、参加者でもない学生を無断撮影する行為が絶えないことだ。

 去年と今年は、慰霊の日を避けて平和祈念公園を訪れたにもかかわらず、学生が無断で撮影され、知らないうちに新聞記事やインターネット上に写真などを掲載された。

 イベントの本質から外れた、若者とりわけ女性に注目した報道によって生じる問題は、慰霊の日だけのものではない。これまで沖縄で見てきた、「若者」「女性」を消費する報道や選挙活動のあり方を、この機会に一度振り返ってみたい。

拡大慰霊の日。戦没者の名前が刻まれた「平和の礎」には、多くの遺族たちが訪れた=2021年6月23日、沖縄県糸満市

若い女性を撮りたがる「慰霊の日」報道

 6月23日は、太平洋戦争末期の1945年3月から国内で展開された地上戦である沖縄戦において、日本軍の司令官が自決し、組織的戦闘が終了した日とされる。沖縄県内では「慰霊の日」と呼ばれる祝日であり、毎年、糸満市の平和祈念公園で県主催の慰霊式典が営まれる。

 県民の4人に1人が亡くなったとされる沖縄戦では、行方不明者や遺骨が遺族のもとに返らないままの死者が多い。そのため慰霊の日には、平和祈念公園内の国籍、敵味方を問わず犠牲者の名前を刻んだ「平和の礎」に、墓参りの代わりに大勢の遺族が集まる。

 去年のゼミでは、慰霊の日の前日に公園を一周した。公園じたいが沖縄戦最後の激戦地だった場所であり、歩いて戦況を追体験することが目的だった。

 その日の深夜、Yahoo!ニュースで時事通信が撮影した学生の画像を発見。すぐさま那覇支局に電話をかけて抗議したが、時すでに遅く、翌朝の東京新聞にその写真が使われた。女子よりも男子の数の方が多かったにもかかわらず、「平和の火」を眺める女子たちを切り取り、顔が分かる状態で正面から写した写真を遠くから撮られた。周囲には人気がなく、暑くて一時的にマスクを外したところを狙われていた。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

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