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若者・女性を消費する報道や選挙はなぜ問題なのか~沖縄の事例から考える

組織の後ろ盾や社会的地位のない若者・女性を利用することで失われるもの

山本章子 琉球大学准教授

一般の人々によるSNS投稿でも

 「敵」はメディアだけではない。一般の人々によるSNS投稿でも起こる。

 現在、米海兵隊普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の代替施設建設のため、日本政府がキャンプ・シュワブ沿岸(名護市辺野古)で埋め立て工事を行っている。沖縄県が2015年、県外の土砂の持ち込みを規制する条例を成立させると、政府は2020年、埋め立て工事に使う土砂の採取候補地に、沖縄戦最後の激戦地だった沖縄島南部の糸満市、八重瀬町を追加する。

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の代表、具志堅隆松さんは、埋め立て工事に戦没者の遺骨が残る南部の土砂を使わせないよう県に訴えるため、今年の慰霊の日に向けて、県庁前の広場と平和祈念公園で5日間のハンガーストライキを行った。

 私は慰霊の日の前々日、メディアが夕方のニュースや翌日の朝刊に向けて引き上げた時間帯を見計らって、学生とともに平和祈念公園を訪れた。今年のゼミ生は女子が圧倒的に多いので、マスクも決してとらず、念には念を入れての行動だ。

 具志堅さんの心身の負担にならないよう、県に渡す署名だけして帰る予定だったが、1時間以上かけて来た地元の若者7人に具志堅さんの方から声をかけられ、約2時間の対話に応じられた。話に夢中で私も学生も気づかなかったが、周囲にいたらしい一般の人々が、いつのまにかSNSに学生の後ろ姿の写真や彼/彼女らの発言を投稿していた。ドキュメンタリー制作会社である「森の映画社」にも、社名や目的を知らされないまま映像を記録されていた。

 後日、SNS上の投稿はすべて削除してもらい、森の映画社からは映像使用時に事前の許可をとる約束を得たが、同社の女性が「平和祈念公園に行ったら撮られることぐらい分かるでしょう」と、電話口で言ったのはショックだった。

拡大慰霊の日、平和祈念公園でハンストを続ける具志堅隆松さん(右)の元を訪れた玉城デニー沖縄県知事=2021年6月23日、沖縄県糸満市

なぜ若い女性の写真が必要なのか?

 慰霊の日は遺族が沖縄戦で失った家族に会いに行く機会であり、主役は当然ながら遺族である。なぜ若い女性の写真が必要なのか。

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筆者

山本章子

山本章子(やまもと・あきこ) 琉球大学准教授

1979年北海道生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。2020年4月から現職。著書に『米国と日米安保条約改定ー沖縄・基地・同盟』(吉田書店、2017年)、『米国アウトサイダー大統領ー世界を揺さぶる「異端」の政治家たち』(朝日選書、2017年)、『日米地位協定ー在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書、2019年)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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