メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

「ひげそりの貧困」は誰のために言っているのか

男性の貧困問題は女性や老人や子供の貧困問題を貶めるための材料ではない

赤木智弘 フリーライター

 最近、その問題が認知され始めた「生理の貧困」問題。必須であるはずの生理用品が貧困で買えない女性がいることから、役所や学校の保健室や女子トイレなどで生理用品の無料配布などの動きがある。政府の男女共同参画会議でもこの問題が議題に上がり、様々な支援の形が話し合われている。

 そんな中、日本維新の会所属の梅村みずほ参議院議員が6月2日にこのようなツイートをしていたのが、7月になってTwitter上で徐々に話題になっている。

 梅村議員曰く「『生理の貧困』を入れるなら『ひげそりの貧困』も入れませんか。つい女性に支援を!の声が大きくなりがちだが男性も困ってる人はいる。貧困世帯の男子のことも考えてあげたい。」というのだ。

 確かに貧困は女性だけの問題ではないが、それにしても「ひげそりの貧困」ってなんだろうか?

拡大「ひげそりの貧困」を訴える梅村みずほ議員のツイート
https://twitter.com/mizuho_ishin/status/1400079930604494848

比べてどうなるものでもなく、比較対象になるはずがない

 自分を例に挙げてみる。

 僕個人のひげ剃りコストは、僕はメインでは両刃カミソリでひげを剃っている。それに朝ちょっと剃りたい時用に電動シェーバーも持っている。両刃カミソリのホルダーは少し高級なホルダーを使っている。だいたい8,000円程度。すでに10年ほど使っているが、まだ買い換える必要は感じない。しかしここでは10年で買い換えるということにしておこう。すると年800円。

 替刃は1枚50円程度のものを使っている。これを2週間程度使うので月100円で年1,200円。シェービングフォームが1缶で3カ月程度。1缶400円を4回だから1600円としよう。電動シェーバーは確か6,000円程度で、これも10年くらいで買い換えるので年600円。ひげ剃りのコストはこんなものだろう。これで年に4,200円程度。10年で42,000円。40年で168,000円だ。

 なおこの金額は比較的贅沢をしている。両刃カミソリを使うにしても安いホルダーであれば1,000円ほどで買えるし、電動シェーバーも2000円程度で買える。フォームだって浴用石けんで代用する人もいる。また電動シェーバーだけでひげ剃りをしている人も多く、その場合はシェービングフォーム代などもかかってこない。ただし、ある程度の頻度で外刃と内刃を買い換えれば、フォーム代と同程度か少し高い程度にはなるだろう。

 一方で女性の生理用品はプラン・インターナショナルがまとめた「日本のユース女性の生理をめぐる意識調査結果」によると、自分で生理用品を購入している人のひと月当たりの生理用品購入金額は、301円〜700円あたりの層が多い。この真ん中をとって500円と考えても、年間6,000円かかる。これに40をかければ40年で240,000円だ。

 意外とひげ剃りと数字がそれほど変わらないと思う人がいるかも知れないが、そう感じた人はいくつか重要なことを忘れている。

 まず、ムダ毛を剃ることを求められているのは男性だけではなく、女性もである。しかも、男性は髭だけを整えておけば、脇毛やすね毛、腕の毛などには何も言われないことが多いが、女性はこれらの除毛をするのが当たり前であると、社会的に見られている。

 そしてもう1つ重要なのは、男性がひげを数日剃らないとしても「無精ひげ」で済まされるが、女性が生理用品を使わなければ、経血が下着を汚すのはもちろん、多ければ垂れ流しになってしまうという、対処しなかった結果の違いである。

 男性のひげは必ずしも確実に対処する必要はないが、女性の生理は確実に対処しなければならないのである。

 確かに、ひげと生理だけを切り出してかかるコストを比べれば大きな金額差はないのかも知れないが、化粧などを含めた身体全体のメンテナンスコストを考えれば、圧倒的に女性の方がかかる金額が大きいことは言うまでもないだろう。

 ハッキリ言って、女性の生理用品にかかる費用と、男性のひげ処理にかかる費用など、比べてどうなるものでもなく、比較対象になるはずがない。実際、梅村議員の主張に賛同する声はほとんど見られず、この発言はスベった感がある。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

赤木智弘の記事

もっと見る