メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

IOCも組織委もトンズラし、負の遺産が納税者にのしかかる~利権まみれの「公共事業」(下)

潤う五輪貴族と一部スポンサー、使途を検証できない無責任組織

小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

戦時中の「国家総動員体制」「情報統制」と映し鏡

 かつての日本は、破滅の道を歩むと分かっていても突き進んでいった。これは第二次世界大戦中の「二正面作戦」と「国家総動員体制」、そして「情報統制」によったことは周知だ。当時の日本は脆弱な国力で日中戦争と太平洋戦争の両戦線を展開した。国民生活に犠牲を強いて、学徒動員までして戦力を補強した。国家とマスコミが結託して国民を欺いた。馬鹿げているというしかない。

 この映し鏡が東京五輪である。いまの日本は東日本大震災の復興事業と東京五輪の開催という「二正面作戦」を展開している。東京五輪開催は森善朗大会組織委前会長の「オールジャパン体制で臨みたい」との号令のもと、学生の大会ボランティア動員のみならず、コロナ禍で子供たちに「学校連携観戦」を強いる。国民はIOCのバッハ会長から犠牲を払えと強要された。まさに戦時中の「国家総動員体制」だ。

会見に臨むIOCのトーマス・バッハ会長=年7月17日、東京都江東区拡大会見に臨むIOCのトーマス・バッハ会長=年7月17日、東京都江東区

 しかも、朝日、読売、毎日、日経、産経、北海道の各新聞社は大会組織委のスポンサーとなった。これに加え、五輪取材記者を含めた大手のマスコミ各社は大会組織委の内部組織、「メディア委員会」に社員記者を送り込んでいる。公権力とそれを監視すべき報道機関が利益を共にして、一体化した姿だ。これも戦時中の「情報統制」にほかならない。

 大会後は「負のレガシー」になると分かっていても、「オリンピック」という錦の御旗を掲げて、競技場や関連施設、道路を次々に建設する。さらには、どさくさに紛れてオリンピックに無関係のものまである。

 新国立競技場の建設費高騰問題では、その責任主体は文科省管轄下の特殊法人、日本スポーツ振興センター(JSC)だった。新国立競技場建設にあわせて、この本部が入る日本青年館ホールの移転費用が税金で賄われたのはこの一例だ。ちなみに新国立問題で辞任に追い込まれたJSCの河野一郎理事長はその後、大会組織委副会長に横滑りしている。

 五輪会場整備の管轄は文部科学省になる。その族議員の首領が森喜朗元首相だ。招致決定後、大会組織委の会長に収まったのはこのためだ。ただ、文部科学省に大規模な公共工事を任せるのは難しい。公立学校の建設費は20億円程度。文科省はこの程度の仕切りしかできない。新国立競技場の失敗の根っこはここにある。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

小田光康

小田光康(おだ・みつやす) 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

1964年、東京生まれ。米ジョージア州立大学経営大学院修士課程修了、東京大学大学院人文社会系研究科社会情報学専攻修士課程修了、同大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門はジャーナリズム教育論・メディア経営論、社会疫学。米Deloitte & Touche、米Bloomberg News、ライブドアPJニュースなどを経て現職。五輪専門メディアATR記者、東京農工大学国際家畜感染症センター参与研究員などを兼任。日本国内の会計不正事件の英文連載記事”Tainted Ledgers”で米New York州公認会計士協会賞とSilurian協会賞を受賞。著書に『スポーツ・ジャーナリストの仕事』(出版文化社)、『パブリック・ジャーナリスト宣言。』(朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

小田光康の記事

もっと見る