菊池刀子(きくち・とうこ) 保育士・イラストレーター
1991年生まれ。現在、都内で保育士として勤務。兼イラストレーター。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
この1年余、自分たちの行動の効果はどれだけあるのか、検証に基づく議論が必要だ
私は、幼稚園につとめた後、一度保育の現場を離れました。数年を経て再び保育士として働くことを決意し、現在は都内の社会福祉法人の保育園に勤務して、今年で3年目になります。保育園勤務中の約2年半の間に、新型コロナ禍の前と今の現場を、自分の目で見てきたわけです。
保育士の仕事は、新型コロナウイルスの感染が広がる前からハードでした。とにかく人手が足りなくて、一人ひとりの子どもたちと、ゆったり余裕を持って接してあげられないことが多く、「これでいいのだろうか」と反省しきりの毎日でした。
幸い一緒に働く保育士たちは誰もが一生懸命で、互いに励ましあって何とか乗り切ってきました。しかし、一生懸命さには良い面だけではなく、悪い面もあります。身体のつらくても周囲に遠慮して言えなかったり、記録を完全なものにしようとして残業せざるを得なかったり、上からの指示が多少理不尽でもなんとかそれを実現しようと黙って聞いていたりする場面を、私は何度も見てきました。
私が就職した保育園は、設立から数年の比較的新しい保育園でした。そのためでしょうか、園の方針や保育士一人ひとりの役割などがまだ明確ではなく、これから作り上げていく段階にありました。そんな時期に、コロナ禍に襲われ、対策に取り組まなければならなくなりました。
保育現場では今、コロナ感染対策が最優先になっています。子どもたちの命を守るために、できる限りのことをしようとするのは当たり前です。しかし、感染拡大から1年以上が経つなか、今の対策が本当に的を射ているのか、改めて考える時期に来ていると、私は感じています。
なぜ、そう感じるのか。昨年以来のコロナ対応を振り返りつつ、考えてみます。
保育園で子どもの成長を見守るには、保護者と連携を取ることは不可欠です。ところが、私の勤務する保育園が昨春のコロナ感染拡大に際してまず行ったのは、連携とは真逆の突然の休園でした。しかも、2カ月後に再開園した後にも、行われるべきはずの保護者会は開かれず、個人面談も行われませんでした。保護者とのコミュニケーションを図れると思っていた恒例行事もなく、唯一顔を合わせることのできる朝の受け入れ時と夕方のお迎え時にも、なるべく会話は避けるように言われました。
連携を取るどころか、担任と保護者が互いのこともよく知らぬまま、約1年半が過ぎてしまいました。
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