「感動」の裏で起きていること
2021年07月22日
「オリンピックのために、困窮者はホテルから出ていってもらいます」。こんな不条理、許されていいのだろうか……。
昨年以来、東京都では住居を失った人が生活保護を申請した場合、協定を結んだホテルに1カ月間程度、滞在できる対応をとってきた。だが、五輪開催強行にともない、宿泊需要が高まったことで、ホテルを利用できないケースが相次いでいると報じられている(注1)。実際に筆者が生活保護申請の同行支援に携わった当事者も、それまで滞在していたホテルから移らざるを得なくなってしまった。
先月、筆者のもとにこのような相談が届いた。
「収入が足りなくて、いま家がありません。仕方なく友達の家で寝泊まりをしているが、長期化しており関係が悪化しています。友達に迷惑をかけないように、夜は極力公園で時間を過ごすようにしています」
相談した女性は20代前半である。深夜にたった一人で、公園で過ごさないといけないという状況を強いられていた。身体的にも精神的にも限界だ。その状況を耳にして、筆者は生活保護の申請を勧めた。当初は躊躇していたが、翌日意を決して区役所福祉課に行ったものの、勧められたのは緊急小口資金および総合支援資金の貸し付けと、住居確保支援金制度だった。
前者は、償還免除の要件が規定されているとはいえ、事実上の借金である。また、後者はすでに住まいがありながら、家賃を十分に払えない人向けの支援制度である。結局、生活保護の申請書は渡してもらえなかったという。
そこで筆者は知人と共に申請に同行した。安全な住まいがないことを説明すると、その日から暫定的にホテルに宿泊できることになった。この対応は迅速で本当にありがたい限りだった。
しかし担当者はこう付け加えたのだった。「オリンピックの関係で7月後半以降はホテルが取れません。7月下旬にはホテルを出て
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