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正当な名古屋市民の署名で河村市長のリコールを成立させてほしい

トヨタを怒らせたとたんに謝るパワハラ市長の「しょーもなさ」

赤木智弘 フリーライター

 東京オリンピックで金メダルを獲得した女子ソフトボール。名古屋出身で日本代表の後藤希友選手が金メダルを手に、名古屋市市役所を表敬訪問した。訪問を受けた名古屋市長の河村たかし氏は、後藤選手から金メダルを手渡されると、マスクを外してまさかの金メダルをがぶりと口にした。

 僕も最初にこの一件の動画を見たときに、もう言葉がまったく出なかった。

 確かに金メダルをとった選手自身が、カメラマンなどに促されて金メダルを噛むポーズをとることがある。そのポーズを嫌う人もいるが、選手がする分には文句を言う必要もないだろう。

 しかしまさかそれを他人の金メダルでやる人間がいるとは思わなかった。本当に唖然とするしかなかった。

自分が金メダリストよりも偉いことを示す威圧行為

拡大表敬訪問した後藤希友投手(右)の金メダルをかむ河村たかし・名古屋市長(左)。=20201年8月4日、名古屋市役所

 当然ネットでは、河村市長に対する批判の声が上がった。しかしネットでいくら批判的に扱われても河村市長自身は余裕だった。

 その余裕が8月4日夜に彼が出した「最大の愛情表現だった。迷惑を掛けているのであれば、ごめんなさい」という、事の重大さを認識していない、極めて軽いコメントに現れている。

 だが余裕なのは当日だけだった。翌5日に後藤選手が所属するトヨタ自動車が「今回の不適切かつあるまじき行為は、アスリートへの敬意や称賛、(新型コロナウイルス)感染予防への配慮が感じられず、大変残念に思う。河村市長には責任あるリーダーとしての行動を切に願う」と、河村氏の行為に明確に否定的なコメントを行ったことが報じられると、河村市長は市幹部を伴いトヨタ自動車本社に駆けつけ、謝罪文を提出したという。河村市長自身は「車で待機していた」と余裕であったかのように話しているが、アポも無しに市長が会社の近くまで行ったのは、それだけ余裕がなかった証拠である。

 その上で緊急記者会見を開き、前夜のコメントとは比べものにならないちゃんとした文章の謝罪文を読み上げた。その際には何度も言葉を噛むなど、かなり焦っている様子がありありとうかがえた。

 名古屋市の市庁舎の中では王様扱いの河村たかしも、世界一の自動車メーカーであり、愛知県はもちろん日本の経済に大きな影響を与えるトヨタ自動車に睨まれては今後の政治生命も危うい。そう気づいてようやくまともな謝罪文を出す気になったのだろう。

 河村市長がやったことは数年前に流行った、バイトがコンビニのアイスケースに入ったり、店の食べもので遊んでいる動画を撮影して、それを動画投稿していた「バカッター」と同じである。それをまさか市長がやらかすとは思わなかった。

 この行為をセクハラだと言う人がいる。だが僕はこれはセクハラだとは思わない。「おじいさんが若い女子のメダルを口にした」という生理的な気持ち悪さからセクハラと考えたい気持ちは分かるが、僕は、もし表敬訪問したのが男子選手だったとしても、河村市長は同じことをやっただろうと思う。

 僕は今回の行為はパワハラだと考えている。

 なぜならあの時あの場所に、河村市長を批判できるひとは誰もいないことを知っていて、あえてああした無茶な行為を行っているからだ。

 周囲の職員はもちろん、取材をしていたマスコミ、そしてメダルを取った選手当人に至るまで、あの場ですぐに「何をやっているんだ!」と止めることができなかった。

 河村市長はあの場で何をしても誰にも怒られないことを知っていた。そして何より、ああいう「ちょっとお茶目な行為」をすることを期待する市民がいることを知っていたのである。

 河村市長にとって、金メダリストのメダルを噛むという行為は、自分が金メダリストよりも偉いことを示す威圧行為であった。

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筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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