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子どもと社会のwell-beingをみんなでつくる〜市民性の醸成が生む可能性

「#問いを贈ろう」が開始。子どもの声を聞き、できることで関わり、社会の力に変える

小澤いぶき 児童精神科医、認定NPO法人PIECES 代表理事/Reframe Lab

「精神的幸福度」が低い日本の子どもたち

拡大子どもたちは折り紙で想像力を膨らませる=撮影・吉澤健太さん
 日本の子どもの「精神的幸福度」は、調査国38カ国のうちの37位である――。2020年にユニセフ(国連児童基金)が発表したレポートの結果を、なんとなく耳にされた方もいるかと思います。

 この結果は、2020年9月にユニセフ・イノチェンティ研究所が発表したレポートカード16『子どもたちに影響する世界:先進国の子どもの幸福度を形作るものは何か』(Worlds of Influence: Understanding what shapes child well-being in rich countries)に掲載されています。

 このレポートにある「精神的幸福度」は、「子どもの幸福度」の項目の一つです。調査項目として、「生活満足度の高い子どもの割合」や「自殺率」が挙げられています。

 幸福度については報告当時、ニュースなどでも取り上げられて話題になりましたが、さらによくみていくと、子どもを取り巻く環境がとても複雑で複層的であることが、レポートから浮かび上がってくる点にあります。

レポートから見える子どもの幸福度の実相

 レポートは序章で、「子どもの幸福度は、子ども自身の行動や人間関係、保護者のネットワークや資源、そして公共政策や国の状況から影響を受けることを示す、多層的なアプローチをとっている。このアプローチは、子どもの権利を実現し幸福度を促進するために、政府、家族、地域社会に責任があるとする、子どもの権利条約に沿ったものである」と明示します。そのうえで分析の枠組みとして、子どもが直接経験する「子どもの世界」を中心に置き、直接的・間接的に子どもに影響を与える「子どもを取り巻く世界」及び、経済的、社会的、環境的要因を含む「より大きな世界」を含めて複層的に分析を加えています。

 またレポートには、子どもの権利条約の観点から、子どもたちの意見表明の機会及び意思決定への参加の重要性が、幸福度にも成長にも不可欠であることが記されています。

 さらに、子どもの幸福度に影響を与えるより広い範囲の因子について、
・オーストラリアでは若者の59%が、気候変動を自分たちの安全にとっての脅威であると考えており、4人に3人が政府による環境への対策を求めている、
・子どもたちが将来についてどう考えるかは、現在の幸福度にも影響を及ぼす。例えば、環境問題を懸念している子どもは生活満足度が低い傾向にある、
といった詳細な記載もなされています。

 このほか、社会的状況に関する「困った時に頼れる人がいるかどうか」という項目において、「日本は約20人に1人の大人が困った時に頼れる人がいないと感じており、38カ国中32番目であった」一方、殺人による死者は少ないのも特徴だと指摘しています。

 ちなみに、内閣府が発表した 「子供・若者の意識」(出典:内閣府「子供・若者の意識に関する調査」)では、「どこにも相談できる人がいない」と答えた子ども・若者は21.6%にのぼっています。全て子ども・若者の現状の反映ではないかもしれませんが、子 ど も ・ 若 者 の5 人に1人が相談できる人がいないと感じていることがわかります。調査対象などが違うのでユニセフの調査と単純に比較はできませんが、子ども・若者の現状の一端を表している結果ではないかと考えられます。

拡大maruco/shutterstock.com

私たち一人一人、そして全てが関わる問題

 こうした現状を見ていくと、子どもの幸福度には、環境や政策、地域社会におけるネットワークや資源のあり方、企業等における保護者の働き方など、様々な要素が関わっていることが分かります。逆に言えば、子どものことを全て家族の責任や枠組みだけで捉えるのではなく、社会に生きる私たちの一人一人、そして全てが関わる問題としてとらえ、向き合っていく必要があるのです。

 子どもの幸福度に自分たちも関わっている。そう考えたとき、私たちは何をすればいいのでしょうか。子どものことを、そして自分のこと、違う時間や環境を体験している様々な人たちのことを置き去りにしたり、痛みをそのままにしたりする上に成り立つ社会ではなく、この世界を共にしている様々な人やものが共に生きていくために、いったい何ができるのでしょうか。

 そんな大きすぎる問いと願いを持ちながら、お互いの尊厳や権利を大切にすることを 、 一人一人が問い直し実践する、そんなダイナミクスを生み出し、「子どもと社会のwell being」を実現するために、私たちPIECESでは「Citizenship for Children」という市民性を醸成するプログラムを様々な地域の方とともに実行し広げてきました。

拡大「Citizenship for Children」の画面から

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筆者

小澤いぶき

小澤いぶき(おざわ・いぶき) 児童精神科医、認定NPO法人PIECES 代表理事/Reframe Lab

精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。人の想像力により、一人ひとりの尊厳が尊重される寛容な世界を目指し、認定NPO法人PIECESを運営している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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