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ワクチンは「職域接種」ではなく行政が責任をもって進めるべきだった

客の前に立つエッセンシャルワーカーを今からでも優先せよ

赤木智弘 フリーライター

 新型コロナの爆発的な新規感染者数増加はまったく収まる気配を見せない。これを書いている時点で一日の新規感染者数は国内で2万人を超え、東京都だけでも6000人を超えようとする勢いである。

ワクチンの効果は確実に現れている

拡大東京都行幸地下ワクチン接種センターを視察する小池百合子東京都知事=2021年8月1日、東京都千代田区

 だが、決して悪い話ばかりでもない。東京都のデータを見ると1つ気づくことがある。それは新規感染者数の50代と60代の間に、数値の壁が存在するのである。

 2021年1月1日時点の東京都で暮らす50代は1,956,885人 60代は1,380,304人。そして8月13日のデータを参照するが、新規感染者数は50代は689人、60代は188人。1000人あたりの新規感染者数で比較すると50代は0.35人、60代は0.13人と、ハッキリと感染しやすさが違うのである。

 さらに20代から40代と70代の1000人あたりのデータを加えると「20代 1.04人」「30代 0.61人」「40代 0.42人」「50代 0.35人」「60代 0.13人」「70代 0.05人」となり、壁の存在が分かりやすくなる。

 この傾向は他の日のデータを見ても同じである。理由はやはり「すでにワクチン接種が2回終わっている人には、新型コロナが感染しづらくなっている」と考えるのが妥当だろう。

 コロナワクチンの高齢者の接種割合をNHKがまとめたサイトを見ると、東京都の65歳以上の高齢者の8割がすでに2回目のワクチン接種を終えているので、その効果が出ていると考えられる。もちろん感染者は増え続けているので油断はできないが、それでもワクチンが確実に効果を出している様子が数値として表れているのは1つの安心材料である。

 僕は幸いにして、2回目のワクチンを接種することができたが、まだまだ接種の機会に恵まれない人は多い。そのあおりを食っているのが私たちの生活に欠かすことのできない場所で働くエッセンシャルワーカーたちだ。

エッセンシャルワーカーに相次ぐ感染

 デパートの従業員や駅員などといった、不特定多数の人が集まる場所で働くエッセンシャルワーカーのコロナ感染が相次いでいる。

 東京都内にあるデパートのサイトを見ると、「お知らせ」として新型コロナの感染があったことを公表しているが、日付を見ると毎日のように次々と店員に感染者がでていることが分かる。

 新宿ルミネエストでは8月4日を臨時休業として、館内の一斉消毒を行うなど、どこのお店も新型コロナウイルスの大幅な蔓延になんとか対抗しようと頑張っている。

 そんな中、日本経済新聞に興味深い記事が出ていた。新宿伊勢丹本店の8月6日までの1週間の新型コロナウイルス感染者は累計で94人。その内訳を見ると、三越伊勢丹の社員は1名で、その他93人は取引先の外部社員だったという(「職域接種の範囲どこまで 伊勢丹の感染、99%外部社員」日本経済新聞電子版2021年8月6日付)。

 三越伊勢丹では自社の社員に対して職域接種を進めていたが、その一方で取引先の接種状況は会社ごとにバラバラで、未だにワクチン接種を受けられない売り場のスタッフたちが、不特定多数を相手にしなければならない仕事内容から、新型コロナに感染しやすい状況に晒されていると考えられる。

 当たり前のことだが、デパートのテナントにいる店員は、そのデパートの会社に所属しているのではなく、テナントの会社に所属している。企業単位で行う職域接種だけでは、様々なテナントが入るデパートでのワクチン接種の足並みが揃わないのも当然である。

 デパートの社員だけが元気でも、テナントが元気でなければ、デパートの営業は成り立たないのである。

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筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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